その映画、感動して終わりですか?
あらゆる分野を横断できる自由な学問
文化論は、ジャンル横断の学問です。例えば、映画を研究する場合でも、技法やテーマにとどまらず、社会や歴史、政治やジェンダーなど、あらゆる角度からアプローチが可能です。ジャンルを横断しながら、その背景を研究することに意義があります。鑑賞するだけでは得られない、思わぬ解釈、価値観の発見ができる学問です。
金熊賞2作同時受賞から何を読み取るか
9.11同時多発テロから半年後、2002年2月のベルリン国際映画祭では、最高賞である金熊賞が例外的に2作品に与えられます。ジブリ映画『千と千尋の神隠し』と、北アイルランド紛争での血の日曜日事件を題材にした『ブラディ・サンデー』です。日本のメディアは宮崎駿監督の快挙を称えましたが、ここで立ち止まって考えるのが文化論の入り口です。
人は異形の者たちや自然それ自体とも共生できると主張する『千と千尋の神隠し』に対し、たとえ英国人同士であっても、宗教が異なるだけで殺し合いとなる『ブラディ・サンデー』の主題は、前者とは真逆です。両者は、共生の受容と拒絶というコインの表裏。テロから半年後の世界に向けて、ベルリン国際映画祭が問うたのは、「あなたはどちらを選びますか?」というメッセージです。文化を考えることは、メディアを解釈することです。メディアを読み解く能力「メディア・リテラシー」が、ここではとても重要です。このような複数の視点を持つことが、その先の研究に繋がるのです。
一人ひとりが新しい考え方を生み出せる時代
芸術を楽しむこと、メディアから情報を得ることは、社会的・文化的な生活に欠かせない要素です。ですが、メディアの主張を受け入れるだけでは、身につくのは偏った知識にとどまります。リテラシーを持つことで、新しい考え方が生まれ、比較検討もできるのです。
現代には情報が溢れています。それに対し、いかに批評的な視点で考えられるかが大事です。文化を学ぶことは、複数の分野を横断して思考することです。これこそが、文化リテラシーに他なりません。
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先生情報 / 大学情報
関西学院大学 法学部 教授 塚田 幸光 先生
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表象文化論、映画学、アメリカ研究先生が目指すSDGs
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