スペインの独裁体制から現代の権威主義をひもとく
スペインは明るい国?
スペインというと、「太陽と情熱の国」と形容されるように、明るいイメージがあります。しかし今からそう遠くない1939~75年にかけて、フランコという軍人・政治家による独裁の時代がありました。現代では、かつてのような形の独裁はほとんどなく、「権威主義」と呼ばれる、非民主主義が台頭しています。現代の権威主義は選挙も議会もあり一見、民主主義的な政治が行われているように見えても、不正が横行している場合も多くあります。フランコ政権当時のスペイン政治史の研究は、現在の世界の課題を考えることにつながります。
史料から読み取れる実情と、今に生かせる学び
「独裁」というと、激しい抑圧や、人々が耐え忍ぶ姿を思い浮かべるかもしれません。しかし史料を丹念に読むと、そういった予想は裏切られます。あらかじめ結果がわかる選挙に対して市民は白けた空気を隠さず、新政権に消極的に賛意を示しながらも生きる道を探る、したたかな人々の姿も見えてくるのです。また独裁政権下でも社会がそれなりに安定し、経済発展がもたらされていると、人々はその状況を受け入れることもわかります。独裁政権は抑圧だけを行うのではなく、人々の側にも意外にも社会になじむ様子が見受けられるのです。安定した状況を受け入れ、むしろ変化を嫌うという側面は、現代の日本の状況にも相通ずる部分があるでしょう。
さらなる歴史的発見への期待
独裁の研究は、スペインと同じく独裁政権があったポルトガルを対象としても、手付かずの部分はまだ多く興味深い分野です。選挙に限らず、今後、史料や文献にいろいろな側面から光をあてていけば、ほかにもさまざまな発見が生まれる可能性があります。当然ですが現在のスペイン・カタルーニャ独立運動も、フランコ政権時代と無関係ではありません。スペイン、ポルトガルの政治史は新たな発見の宝庫なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
関西学院大学 法学部 政治学科 教授 武藤 祥 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
政治史学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?