女性の政治参加を目指して~インドの実証分析からわかったこと~
発展途上国の問題を解決する研究
開発経済学とは、研究対象を発展途上国が直面する貧困、紛争、差別などの問題とし、それをどうやって改善するか、その施策を考える学問分野です。最近では政策やプログラムを実施して終わりではなく、その効果を確かめる「実験的」なアプローチが重視されるようになっています。客観的な検証結果をもとに政策、プログラムの効果を判断することで、より効率的に問題解決できる政策に税金や資源を投入できるからです。
ジェンダーギャップをなくすクォータ制
発展途上国では、歴史的に女性は男性に従うものという価値観が残っている場合が多く、ジェンダーギャップ(男女間格差)、女性に対する暴力や差別が問題になっています。これを是正するために各国で導入されているのが「クォータ制」と呼ばれる、国会や地方議会の議席のうち一定数を女性に割り当てる仕組みです。例えばインドの地方議会では、議席の三分の一から半分を女性に割り当てる制度が導入されています。その制度の効果を確かめるために、現地政府の統計資料を活用したり、現地の調査会社や研究者の協力を得て聞き取り調査を行ったりする研究が進められています。
女性リーダーが活躍することで
研究により、女性議員の提案によって村に貯水タンクができ、女性の水くみ労働が軽減されたり、地域の生活が改善していることが明らかになりました。また政治の場で活躍する女性リーダーの姿を見て、親も女子に期待をするようになったり、女子自身の社会で活躍することへのモチベーションが上がって、家事を手伝う時間が減り勉強時間が増えたりしていることがわかりました。
さらに、女性に対する犯罪の報告件数が上がったということも明らかになっています。これは、これまで犯罪の被害者となった女性は泣き寝入りをすることが多かったものが、政治的な力を持つ女性リーダーが増えたことで、そうした人たちも被害を報告しやすくなったからだと考えられます。
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先生情報 / 大学情報
津田塾大学 学芸学部 国際関係学科 准教授 森 悠子 先生
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