道徳性の違いが誤解を生む? 自閉スペクトラム症とは

人との関わりの困難さの背景
子どもの発達障害の一つに「自閉スペクトラム症」があり、発達障害ではない「定型発達」の子どもとは生まれつき脳機能に違いがあるとされています。自閉スペクトラム症の人々の特徴の一つとして、他者の心を瞬時に想像し、臨機応変に行動することが難しい、ということが挙げられます。こうした特徴により、他者とのコミュニケーションがうまくいかず、生きづらさやさまざまな困難を抱えてしまうことがあります。
道徳的な判断の違いを調査
自閉スペクトラム症については多くの研究が行われていますが、その中に「道徳性」の発達に着目した研究があります。こうした研究の中で、「悪いことをしようと思っていなかったが、結果的に悪いことにつながってしまった」といった過失場面での道徳的判断を調べるものがあります。このような判断では、定型発達の人々は、「悪いことをしようと思っていなかった」という主人公の心を重視し、寛容な判断を下す傾向があります。一方、自閉スペクトラム症の人々は、心よりも客観的なことを重視し、厳しい判断を下す傾向があることが分かっています。
こうした研究を通じて、両者における他者の心の捉え方の共通点と相違点が、徐々に明らかになりつつあります。
研究が相互理解の一助に
定型発達の子どもは幼いころから直観的に他者の心を想像する機能を備えているのに対し、自閉スペクトラム症の子どもは、日常生活の中で人との関わりを通じて学習し、論理的に考えながら他者の心を想像するようになるのです。先ほどの道徳的判断の違いも、こうした発達の違いが影響している可能性があります。
こうした研究は、自閉スペクトラム症の人々の生きづらさやさまざまな困難の原因の一端を明らかにし、相互理解を深める手がかりになることが期待されています。
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