道徳性の違いが誤解を生む? 自閉スペクトラム症とは

道徳性の違いが誤解を生む? 自閉スペクトラム症とは

人との関わりの困難さの背景

子どもの発達障害の一つに「自閉スペクトラム症」があり、発達障害ではない「定型発達」の子どもとは生まれつき脳機能に違いがあるとされています。自閉スペクトラム症の人々の特徴の一つとして、他者の心を瞬時に想像し、臨機応変に行動することが難しい、ということが挙げられます。こうした特徴により、他者とのコミュニケーションがうまくいかず、生きづらさやさまざまな困難を抱えてしまうことがあります。

道徳的な判断の違いを調査

自閉スペクトラム症については多くの研究が行われていますが、その中に「道徳性」の発達に着目した研究があります。こうした研究の中で、「悪いことをしようと思っていなかったが、結果的に悪いことにつながってしまった」といった過失場面での道徳的判断を調べるものがあります。このような判断では、定型発達の人々は、「悪いことをしようと思っていなかった」という主人公の心を重視し、寛容な判断を下す傾向があります。一方、自閉スペクトラム症の人々は、心よりも客観的なことを重視し、厳しい判断を下す傾向があることが分かっています。
こうした研究を通じて、両者における他者の心の捉え方の共通点と相違点が、徐々に明らかになりつつあります。

研究が相互理解の一助に

定型発達の子どもは幼いころから直観的に他者の心を想像する機能を備えているのに対し、自閉スペクトラム症の子どもは、日常生活の中で人との関わりを通じて学習し、論理的に考えながら他者の心を想像するようになるのです。先ほどの道徳的判断の違いも、こうした発達の違いが影響している可能性があります。
こうした研究は、自閉スペクトラム症の人々の生きづらさやさまざまな困難の原因の一端を明らかにし、相互理解を深める手がかりになることが期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東北文教大学 人間科学部 子ども教育学科 講師 岡村 恵里子 先生

東北文教大学人間科学部 子ども教育学科 講師岡村 恵里子 先生

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教育心理学、実験心理学、特別支援教育

メッセージ

私がこの研究に取り組むきっかけとなったのは、自閉スペクトラム症の子どもが自分のことをうまく先生に説明できず、誤解を受ける場面を見たことや、子どもは一人ひとり違っているのに、保育や教育の場ではひとくくりにされてしまうことが多いと感じたことでした。そうした経験から、子ども一人ひとりの心を詳しく知りたいと思うようになりました。この研究を通して、一人ひとりの子どもに出会い、心の内を少し見せてもらえたときに、楽しさや喜びを感じています。あなたも、自分が「楽しい」と思える学問に出会えるとよいですね。

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“自分らしさ”をのばし、人間性豊かな先生になる
大学で学ぶための基礎を固め、専門教育へとつなげる「基礎教育科目」、教育・保育において必要な知識を修得する「専門教育科目」、教育や保育の現場で出会うさまざまな場面に応用できる、より専門的な知識と技術を修得する「専門発展科目」の三つの柱でカリキュラムが構成され、教育・保育のスペシャリストの養成をめざしています。
また、学生一人ひとりの個性を大切にし、人間味ある先生となって子どもと関わり、未来を創っていってもらいたいと考えています。