住まいの「環境管理」で健康を見守る
体温や脈拍を測定して冷え性予防
コロナ禍で冷え性を訴える人が増えています。在宅勤務になって歩く量が減り、ずっと同じ姿勢で仕事をするため、冷え性になりやすいのです。冷え性の予防には、「深部温」と呼ばれる脳の奥の温度と手足の抹消の温度の差の拡大を防ぐことが必要です。この差の測定に、首につけたセンサーの値から深部温をAIで推定する研究が進められ、医療機器として認められる範囲の誤差で推定できるようになっています。将来的には、温度差が一定の数値を超えると、手足を温めたり、エアコンを自動的に稼働させ、室温を上げることもできるでしょう。
病院の安全管理にAI活用
AIは病院の安全管理の研究にも使われています。多くの病院には停電の際の予備電源としてディーゼル発電機が設置されています。しかし、不使用の燃料の定期的な入れ替え・廃棄が必要な上に、普段使わないことから故障しやすく、そのメンテナンスのコストがかさむため、すぐに稼働できる状態になっていない病院も少なくありません。そこで、ディーゼル発電機を平時から運用することが提案されています。通常の電力と、近年設置が拡大している太陽光発電との3つを並行運用し、効率良く稼働させるために、曜日・時間ごとの必要電力をAIで予測し、3つの比率をマネジメントする方法が研究されています。
住環境の管理で健康も管理
このようなエネルギーマネジメントシステムの考え方は、病院だけではなく、オフィスや住宅にも適用できるものです。建物の大きさや用途によって消費電力もその変化の仕方も変わるので、AIが学習するためのデータをどう取るかが研究課題です。住宅に関しては、室温の計測・管理と消費電力管理を結びつけ、体温や脈拍の測定とも連動させて健康管理もできる、家そのもののシステムが考えられます。それが実現すれば、消費電力を抑えつつ、熱中症や冷え性を防ぎ、独居高齢者を見守ることもできるでしょう。また、非接触で体温を測定する手段の開発も研究テーマの一つです。
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先生情報 / 大学情報
大阪電気通信大学 医療健康科学部 医療科学科※2025年4月より健康情報学部 医療工学専攻に改組 准教授 水野 裕志 先生
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医療情報学、生体情報学、安全管理学先生が目指すSDGs
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