変化する都市 日本本土に伝わる沖縄・奄美の文化

なぜ神奈川県で沖縄の民俗芸能が盛んなのか
川崎市や横浜市をはじめとする神奈川県の各地には、遠く離れた沖縄県の琉球民謡や「エイサー」などの民俗芸能が伝承され、それらが披露されるイベントが盛んに開催されている例が見受けられます。なぜなら、京浜工業地帯の一画として発展してきた地域には、100年以上も前から沖縄県や鹿児島県奄美地方の出身者が仕事を求めて移住してきた歴史があるからです。大規模工場の周辺には、多くの沖縄・奄美出身者が集まって住み、沖縄・奄美の文化が伝えられてきたのです。こうした例は、阪神工業地帯など、日本本土の他地域においても見られます。
互いに助け合った同郷者集団
沖縄・奄美では、本土と異なる独自の文化が息づいています。しかし、そうした文化的・社会的な違いから、日本本土ではマイノリティ(少数派)として位置づけられ、様々な場面で差別的な扱いを受けることがありました。そんな中で同郷者が互いに助け合い、安心して集える県人会などの同郷者集団をつくっていったのです。中には、同郷者を経済的に助けたりする相互扶助の機能をもつこともあり、気がねなく出身地の言葉で話し、郷土の歌や踊りを楽しむ同郷者の集まりは、つらい日常を忘れられる大切な居場所だったのです。一方で、リーダー格の人が「本土の言葉や生活に合わせるように」と指導する側面もあったようです。
時代によって姿を変える都市
沖縄・奄美出身者のつながりは、産業を支えるだけではなく、長い年月を通して移住地の社会を構成するコミュニティの基盤にもなりました。その例として、沖縄の民俗芸能は神奈川県や川崎市の無形民俗文化財に指定され、地域に根差した存在になっています。一方で、近年はしだいにその同郷者のつながりが希薄になりつつあることも事実です。
京浜工業地帯周辺に限らず、時代によって都市の姿や人々の暮らしは変わり続けます。「文化地理学・社会地理学」は、地域の文化や社会がかつてどんな姿で、現在どのように変化しているのか、幅広い視点から探究していきます。
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