数値も人の思いも、あらゆる情報が載った地図とは?
地図を作るのは、何のため?
地図を作ると聞いて、あなたはどういう地図を想像しますか。地図は、山や川といった地形や町など、単に地上のものを表すだけではありません。人や車、モノの動きなどをデータ化し、今そこにないもの、目に見えない情報も地図に表せます。情報を視覚的にわかりやすく表現することを、データビジュアライゼーションと言います。そうやってデータの見える化をするのです。
そうした地図の作成には、データサイエンスの知識が必要です。集積されたデータを分析しますが、その場合はどんなデータを集めるかや、何をどう見せたいのかを、主体的に考えて作成します。例えばハザードマップなら、もし地震が起こったら各地域に住む住民がどこへ避難すれば良いのかなどを示します。まさに、目に見えない情報をわかりやすく地図で示しているのです。
データと人の気持ちの融合
福島県の原発事故があったエリアは、全体像や実態を把握するために、長年研究者がデータを取り続けています。目に見えない放射能の数値を元に作成された地図はすでに公開されていますが、そこにある数値は、住む人たちの言葉や思いまでは代弁していません。
人間というものは、場所に対して強い思い入れを抱きます。そこで人の行動を観察して記録に残すという、民俗学や文化人類学の研究手法である「エスノグラフィー」を応用し、地図で表現する研究が進められています。あらゆる分野の知見を生かして、データ情報を可視化する研究が行われているのです。
地図の役割
もし言葉が通じない海外で道に迷っても、地図さえあれば互いに相手が何を言いたいかがわかり、互いの心を通わせることさえできます。地図は、人と人とのコミュニケーションを補助するツールとも言えるでしょう。なぜそのようなことができるのかといえば、やはり見えない情報を可視化しているからです。地図は、情報をわかりやすくビジュアル化する優れたツールなのです。
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