印刷技術で作る、低コストでタフな発光デバイス

印刷技術で作る、低コストでタフな発光デバイス

印刷技術で作る発光デバイスとは

「印刷」と聞くと、本や学校で配られるプリントなどをイメージするかもしれません。しかし最近では、電子デバイスの製造にも印刷技術(プリンテッドエレクトロニクス)が使われています。印刷技術を使った電子デバイスのひとつが、腕時計のバックライトなどに使われる「分散型EL(エレクトロルミネッセンス)」という発光デバイスです。分散型ELは、基板の上に30~40ミクロンの厚さの電極や蛍光体、誘電体などの層が積み重なった構造で、電子が蛍光体の材料にぶつかって発光するという仕組みです。この層構造を作るときに印刷技術を使い、材料を順番に印刷して重ねていきます。大掛かりな装置が必要な従来の方法と違って印刷機があればよく、低コスト、短時間で発光デバイスの製造が可能です。

紙が原料の無色透明の新基板

これまで基板には透明のガラスや樹脂が使われていましたが、軽くて樹脂よりも熱に強い「紙」を基板とする開発研究が行われてきました。紙はフレキシブルで機械的強度が強いという利点もあり、透明でないことがランプシェードのような役割を果たすため、その特徴を生かした使い道が期待されます。さらに紙の成分であるセルロースに化学的処理を行い、無色透明の基板を作ることに成功しています。紙の特長を持った無色透明の新しい基板であり、紙が原料なので再生も可能です。

まったく新しい電界発光ELをめざす

以前は、液晶ディスプレイのバックライトや携帯電話のボタンの発光シートに電界発光分散型ELが使われていましたが、最近ではスマートフォンが主流になったことなどから、分散型ELはあまり使われていません。分散型ELには、同じ発光デバイスである有機ELに比べると応用範囲が狭いというデメリットがありますが、低コストで、製造に時間がかからず、また水や湿度にも強くて劣化しにくいといったメリットも多くあります。分散型ELの特徴を生かせる照明やセンサなど、これまでとはまったく新しい用途が模索されています。

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先生情報 / 大学情報

東京工芸大学 工学部 情報コース 教授 佐藤 利文 先生

東京工芸大学 工学部 情報コース 教授 佐藤 利文 先生

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情報工学(写真応用分野)

先生が目指すSDGs

メッセージ

本学はもともと写真の学校で、工学部は写真工学・印刷工学としてスタートしました。写真というと古いイメージかもしれませんが、今の最先端の技術には、静止画や動画などに写真の技術が利用されています。写真には多くの情報が含まれるため、物の判別や自動運転、ロボットやドローンに取り付けたカメラなど、あらゆるところに応用できるのです。本学では、写真応用技術の基礎から応用まで学べます。特に情報分野での画像・写真応用の教育は特徴的といえるでしょう。またドローンの国家資格取得もサポートしています。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京工芸大学に関心を持ったあなたは

東京工芸大学は 1923(大正 12)年に創設された「小西寫眞(写真)専門学校」を前身とし、創設当初から「テクノロジーとアートを融合した無限大の可能性」を追究してきました。
工学部と芸術学部の 2 学部を有し、工学部は 1 年次に写真とデザインを学ぶことで芸術的なセンスを身につけ、芸術学部はメディアアートを通して工学的な技術を身につけるという、一見相反する両分野を融合させた教育を実践しています。