これからの国際開発協力―持続可能な開発と気候危機への対応―
変わる開発へのアプローチ
開発途上国が目指す開発目標やアプローチが変わりつつあります。国としてのある程度の経済成長や安定性は重要ですが、経済成長だけを重視してきた時代は終わり、今は地球全体のこと、環境との調和も考える必要があります。開発とは経済力があり、便利な生活を得ることだけではありません。「持続可能な開発」が『Our Common Future』で初めて定義された1980年代後半からは、次世代と地球上の資源を共有すること、また世代を超えた公平性も重視されています。2015年以降は「持続可能な開発目標 (SDGs) 」が決まり、世界の開発目標になりました。
持続可能な開発と気候危機への挑戦
では、私達はSDGsだけを考え、目標達成のために実施すれば良いのでしょうか。気候変動問題は「気候危機」と言われ、深刻な影響が私達の生活や経済活動に及んでいます。局所的豪雨と洪水で遮断される交通網、猛暑による農作物への影響などは、私達も既に経験しています。このような影響は、開発を進める途上国でも起きており、これまでは経済成長を目指し、社会基盤を整備し、国民の生活を向上させていけば良かったのですが、昨今は、気候変動の影響で事業が中断したり、状況を後退させることもあります。更に、私達は脱炭素社会を目指し、再生可能エネルギーを普及していく必要がありますが、単に太陽光パネルの設置や風力発電を拡大すれば良いという訳ではありません。住民と環境への配慮がなければ、気候変動対策に良くても、住民の生活や環境を悪化させるリスクがあるのです。
持続可能な開発に向け、協働する国際協力へ
支援するアプローチも、従来の先進国が途上国を「支援する」というやり方では、期待したほど前進しないこともわかってきました。今、求められる国際協力は、協働、パートナーシップで、「共に」の姿勢と実践力です。また、一つの専門だけではなく、学際的な知識と人間力が必要です。今、途上国の持続可能な未来を共に創造していく国際協力が求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
創価大学 経済学部 経済学科 教授 掛川 三千代 先生
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環境経済学、開発経済学、国際開発協力先生が目指すSDGs
先生への質問
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