お金と縁遠い日本の高校生

お金と縁遠い日本の高校生

若いうちは人生に悩むべき?

今はどうか知りませんが、かつてアメリカには、「レモンをレモネードにしてどうやって売るか」という話を使って経済学の基本用語を子どもに学ばせる有名な絵本がありました。幼稚園や小学校の頃から、どうやってお金を稼ぐのか、経済や企業の仕組みはどうなっているのかを自然に学ぶというものです。もし、日本にそんな絵本があったらどうでしょう。きっと、「子どものうちからお金に関する話なんて」と多くの大人たちは眉をひそめることでしょう。日本ではどうしても、“愛”や“友情”や“志”など、人生を考える若者のほうが好まれがちです。
それは教育過程をみても一目瞭然。高校の普通科に通っている人は、国語の時間に国文学を読み、理科の時間に物理・化学などに触れることはあっても、経営や会計など、お金に関して学ぶ機会はまずありません。だから、文学部や理工学部に行く学生も、経済学部や商学部に進学する学生も、「お金」のことや企業の仕組みなどについて何も知らないで、大学生になるというのが普通の姿です。しかし、本当に企業や経済の仕組みについて、多くの人が知らないままに大学を選んでも大丈夫なのでしょうか。この点で、最近の日本では大きな変化が進行中であり、多くの人がこの種のことを学ばなくてはならない時代が来ていると考えた方がよい状況になってきています。

日本もお金に敏感な時代に

かつての日本では、御上(おかみ)(政府)が経済や社会までひっくるめて何でもリードする強力な存在でした。そのため、御上が何を考えているのかという情報を仕入れ、御上の意向を素直に聞く会社や人間が優遇され、出世するということが多く見られました。しかし今、時代は大きく変わってきています。政府が何をするべきかを教えてくれる時代ではなく、お客さんが何を買うのか、何を欲しがっているのかということに基づいて、皆が自分のやるべき事を考えていくという時代に変わってきたのです。これからはどう働き、どう稼ぐかを一人ひとりが自らの責任として自分自身の頭で考えていかなければならないのです。このような時代には、企業や経済の仕組みをしっかり理解していなければ、実際に社会に出たときに、何をどうするかを自分の頭で考えることができなくなってしまいます。その意味で、お金に関わる物事を、大学進学前に少しは学んでおくことが重要な時代になったと考えるべきでしょう。

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先生情報 / 大学情報

一橋大学 商学部  教授 沼上 幹 先生

一橋大学 商学部 教授 沼上 幹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経営学、社会心理学

メッセージ

商学部というと、「お金もうけを勉強するところ?」と思うでしょうか。それは違います。では何を考えているかというと、「みんなの努力が無駄にならないためにはどうすればいいか」ということです。もうかるかもうからないかだけが価値の物差しになっているわけではないのです。
また言えるのは、基礎学問を企業の経営に応用しているということです。社会心理学や歴史学は文学部に行かないとできない、と思うのは間違いで、実は商学部でも学べます。経営組織論や経営史は、分析の対象を企業とした社会心理学・歴史学です。

一橋大学に関心を持ったあなたは

一橋大学の大きな特色として、まず第1に挙げられるのは、我が国で最も伝統のある社会科学の総合大学として、常に学界をリードしてきたという長い歴史と実績、並びにこの伝統を受け継ぎ、人文科学を含む広い分野で、新しい問題領域の開拓と解明を推進する豊富な教授陣に恵まれていることです。第2は、商学部・経済学部・法学部・社会学部の垣根が低く、学生は各学部の開設科目を自由に履修することができます。また、10人から15人程度の少人数で行われているゼミナール制度(必修)を核とする少数精鋭教育も本学の特色のひとつです。