極地や高山でとらえる気候変動の影響
温暖化の影響が最も表れる極地・高山の環境
地球温暖化による気候変動のリスクが叫ばれるようになって久しくなります。しかし、気候変動のメカニズムやそれが生態系にどのような影響を与えるかということについては、まだよくわかっていません。そこでさまざまな研究が行われていますが、そのひとつに気候変動がアラスカやシベリアの極地、また国内での高山の環境にどのような影響を与えているかという研究があります。なぜなら、気候変動の影響が一番端的に表れるのが極地の生態系だからです。
気候変動に対する応答速度の違い
温暖化の影響により、北極海の海氷やヨーロッパの氷河が急速に減少していることはよく報じられます。影響の応答速度が速いためです。一方、アラスカの永久凍土は応答速度が遅いため、それほど減ってはいません。しかし夏場の森林火災が頻発し、その規模も拡大しているため、永久凍土も5~10年をかけて変化していきます。表面が溶けて水分条件が変化し、その上の植生や生態系も変わってしまうのです。こうした永久凍土の変化をモニタリングすることは、地球の気候変動に果たす北極圏や永久凍土の役割を解明するとともに、気候変動の予測をするためにも重要です。
日本国内にも永久凍土が存在
また、日本国内の東北や北海道の高山にも永久凍土が存在し、氷河期の森の植生と環境が維持されていることがわかってきました。夏場に涼しい風が森の中から吹いてくる「風穴」と呼ばれる現象を探っていくと、規模は小さいながらも永久凍土が見つかったのです。また北海道のある風穴の森では、永久凍土とその上の水ごけの共生関係が見られます。水ごけが生成する泥炭の断熱効果で氷が溶けず、水ごけが生育する環境も維持されています。さらにアカエゾマツの針葉樹林やエゾナキウサギなど、氷河期と同じ環境が生きています。
どんな自然にも歴史があります。その地形や生態系を調査・保全していくことが、地球環境を守ることにつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科 教授 澤田 結基 先生
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