人間と小鳥、発声学習の共通点は「生身の先生」と「よく泣くこと」
人間と小鳥の脳の共通点
人間と小鳥には「発声を学習する」という共通点があります。このことから、鳥の発声学習を調べて人間の言葉の起源を探る研究が行われています。ここではその研究成果のうち、脳の働きと社会的背景について述べましょう。
脳にはミラーニューロンという神経細胞があります。これは、本人がある行為をするときに活動し、他人が同じ行為をしているのを観察しているときにも活動する神経細胞です。例えば人間の場合、自分が話すときに活動する神経細胞が、他人が話しているのを聞いているときにも活動します。そして、小鳥にも同様の神経細胞があります。こうした聴覚性のミラーニューロンが確認できているのは人間と小鳥だけであり、これは、ほかの個体の発声を聞くことと発声学習の関連を示唆しています。ちなみに、録音したものを聞くことでも発声学習は可能でしょうか? 研究では、生身の先生がそばにいないと学習がじゅうぶんに達成されないということが、人間の乳児でも鳥でもわかっています。
人間の赤ちゃんも小鳥のヒナもよく泣く(鳴く)
さて、人間の赤ちゃんも鳥のヒナもよく泣き(鳴き)ます。どちらも食べ物を求める声です。しかし、自然の中で幼い者が声を出すことは、天敵に居場所を知らせることになるので本来危険なことです。
人間以外の霊長類の赤ちゃんは常に母親にしがみついていて、ほとんど泣きません。一方、人間は社会的に群れをつくって繁殖、生活するようになったので、泣くことの危険性が低下したのではないかと考えられています。そして「泣く」ことによって、親と子が信号を共有し、そこから言葉が始まったのではないかという説があります。
発声学習の社会的背景
小鳥の場合、ヒナがなるべく鳴かないように親がせっせと餌を運ぶようになります。それによって発声のための神経系が訓練されると考えられています。
人間の赤ちゃんも小鳥のヒナも、よく泣く(鳴く)ことで脳の発声に関わる部位の訓練を促し、発声を学ぶには社会的な接触が必要であるという点で共通しているのです。
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