ジュウシマツが歌を学ぶ過程と人間が言葉を学ぶ過程には共通点が多い

ジュウシマツが歌を学ぶ過程と人間が言葉を学ぶ過程には共通点が多い

ジュウシマツの鳴き声:地鳴きと歌

ジュウシマツの歌を調べることで、人間の言語の起源についての示唆を得ようとする研究が行われています。小鳥も人間も、発声を学んでコミュニケーションに使うからです。小鳥の鳴き声には「地鳴き」と「歌(さえずり)」があります。「地鳴き」はおなかがすいたとき、危険が迫ったときなどの状況に対応した1音節の鳴き声です。これは生まれつき出せる、学習不要な声です。一方「歌(さえずり)」はオスが出す鳴き声で、求愛のときと縄張りを守るときに出す鳴き声です。これは複数の音節から成り、バラエティ豊かな音がいろいろな順番で出てきます。これは学習が必要な鳴き声です。それではヒナはどのように歌を学習するのでしょうか。

ヒナの歌の学び方

それは生後30日ほどから始まります。最初は父親の歌を聞いて覚える時期があります。その時期が終わると、自分でいろいろな音を出す練習の時期があります。120日ぐらいたつと、上手に歌えるようになります。野生のジュウシマツの平均寿命はおよそ9カ月なので、一生の半分近くを学習に費やしていることになります。そのことからも歌の学習は大変重要なものと考えられます。

ジュウシマツと人間との学習の共通点

ジュウシマツの歌学習の進み方は「鋳型仮説」で説明されます。もともと「こういう歌を学べ」と遺伝的に持っている大まかな鋳型(方向付け)があり、お手本を聞いて鋳型を完成させます。これが感覚学習です。その後、自分が歌う歌とお手本である鋳型とのずれを聴覚を使って調整し、練習で上達していきます。これが運動学習です。この過程は人間も同じです。赤ちゃんはもともと人間の声に注意を払う傾向があり、どういう音を出したらいいかを聞いて覚える「感覚学習」を経て、聞いて覚えた音を自分でも言えるように練習する「運動学習」によって、言葉を話せるようになっていきます。こうした現象や学習の仕組み、そして社会的要因などの研究が積み重なることで、言葉の起源がしだいに明らかになっていくでしょう。

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東京大学 教養学部 統合自然科学科 広域科学専攻 教授 岡ノ谷 一夫 先生

東京大学 教養学部 統合自然科学科 広域科学専攻 教授 岡ノ谷 一夫 先生

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メッセージ

携帯電話などの機器が発達して、遠くにいる人でも常にコミュニケーションがとれる時代ですが、大切なのは生身の人間との直接的な交流です。また、簡単にコミュニケーションがとれるので、本当に一人になる時間が減ってきています。一人でじっくりと考え、自分と対話する時間がないと、心はなかなか成長しないのではないかと思います。一人でボーっとする時間、そして一人で本を読む時間を作ってください。読書は自分の目で読み想像して物語を再構成することですから、能動的で大変な作業ですが、そのぶん心を育てます。

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