生命を支える「土壌」と「環境」との関係を考える
森は循環している
「土」と「土壌」は違います。土は「服に土がついた」などの素材としての性格を持ったものですが、土壌は自然の一部という意味です。石と地層の違いを考えるとわかりやすいかもしれません。
自然の一部である土壌が森の中にある場合、まず樹木が土壌の上に落とした葉や枝を微生物が分解します。土の中にはスプーン1杯で何億もの微生物がいて、分解する時に二酸化炭素と腐植(腐葉土)を生み出します。これは「土が呼吸をしている」と言われる現象です。一方、樹木は二酸化炭素と、腐植が分解されて出てきた養分を吸収して成長し、新しい葉や枝をつけていきます。やがて、また樹木は葉を落とします。森はこの循環を長年にわたって繰り返しているのです。
腐植が減り二酸化炭素が増える
しかし、人間の手が加わると、森の循環が変わってしまいます。まず木を切り倒して畑にして、食料となる作物を植えます。栽培する植物は森の樹木に比べて小型であることが多いですから、落ちる葉は少なくなります。微生物は葉を分解し二酸化炭素をつくりますが、足りないので腐植も分解してしまいます。このようにして腐植が減り、二酸化炭素が大気の中で増えて、地球温暖化などを引き起こす原因のひとつになっています。
砂漠化のメカニズム
水田では、かつては米を収穫した後の稲わらや雑草を田んぼの土壌に混ぜ込んで土に戻して栄養分にしていましたが、稲わらも収穫時に刈って取り去ってしまうと、土壌がやせていきます。また、草原でも、羊毛を多く生産しようとしてヒツジをあまりにも多く放牧すると、草が食べ尽くされてしまい、土壌の中に腐植が蓄積されなくなります。そうなると、やがて土壌が劣化を起こして、風によって土や砂が飛ばされていきます。「砂漠化」と言われる現象です。
春になると中国から日本にまで悪影響を及ぼしているといわれている黄砂の一部は、このようなメカニズムで生み出されたと考えられています。このように土壌と環境は密接な関係にあるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
公立鳥取環境大学 環境学部 環境学科 准教授 角野 貴信 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
土壌学、生物地球化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?