一流マラソン選手の持久力はすごい~その体の秘密とは~

一流マラソン選手の持久力はすごい~その体の秘密とは~

糖質のエネルギー貯蔵には限界がある

強いマラソン選手になるためには、持久力の向上が不可欠です。代謝という点では、エネルギー源を体にどれだけ蓄えられるか、いかに効率的に使うかが重要なポイントとなります。エネルギー源となるのは、炭水化物に含まれる糖質です。糖質はグリコーゲンに変換され筋肉や肝臓に貯蔵されます。しかしこの貯蔵は一時的なもので、量も多くありません。いくら食べても、貯蔵できる糖質は大人で2000kcal程度しかありません。

後半にエネルギー切れを起こす理由

もう1つのエネルギー源は体脂肪です。体脂肪率が20%で体重が70kgの人であれば、体脂肪は約14kgになり、1g当たり9kcalの熱量があるので、約10万kcalのエネルギーを蓄えていることになります。マラソンに必要なエネルギーは約2800kcalですから、十分にまかなえる量です。ただ、体脂肪は強い運動よりも軽い運動でより多く燃焼されます。糖質はその逆です。言葉を変えれば、マラソンなどで頑張って運動している際は糖質を主に消費します。そして、マラソン後半に糖質貯蔵が底をつくと頑張れなくなって、急激なペースダウンをしたり、棄権に追い込まれたりします。

一流のマラソン選手は何が違うのか

ところが一流のマラソン選手はそうはなりません。これは、日々のトレーニングによって筋肉や肝臓に大量のグリコーゲンを蓄積できるように体が発達しているからです。また、脂肪を燃焼する細胞内のミトコンドリアの量が増えているので、強い運動でも体脂肪をたくさん燃焼できる体になっています。ミトコンドリアを増やすためには、少しきつい程度の力で長く走ると効果的です。しかし長く走らなくても、20秒の強い負荷と10秒の休憩を8回程度繰り返す、いわゆるインターバルトレーニングを行うとミトコンドリアを増やすことができます。つまり、一流のマラソン選手は、このような練習を積み重ねることで、前半脂肪を多く燃焼し、後半のラストスパートに向けて糖質を温存できる能力に長けているのです。

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先生情報 / 大学情報

福岡大学 スポーツ科学部 スポーツ科学科 教授 川中 健太郎 先生

福岡大学 スポーツ科学部 スポーツ科学科 教授 川中 健太郎 先生

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スポーツ栄養学、スポーツ生理学

メッセージ

ご飯に含まれている炭水化物は、体の大事なエネルギー源です。炭水化物を利用したり、体の中に貯蔵したりする能力がアップすると、スポーツのパフォーマンスが向上したり、病気の予防にもつながります。
私はこの炭水化物とスポーツの関係について研究しています。スポーツ科学部には、スポーツ選手の体の動きや心理状態、さらには健康になるための運動とは何かなどさまざまな研究対象があります。スポーツが得意でなくても、スポーツや健康に興味がある人は、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

先生への質問

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福岡大学は、9学部31学科、在学生2万人を有する総合大学です。多くの学生や教職員が行き交う広大なキャンパスは福岡市の南西部に位置し、都心部との交通の便もよく、活気に満ちあふれています。「ワンキャンパス」に全学部が集結しており、総合大学の魅力を生かし、学問・研究および課外活動などにおいて学部間の交流が盛んに行われ、文系・理系だけにとどまらない幅広く多様な視野と知識を得ることが可能な大学です。また、創立から90周年で輩出した卒業生総数は28万人を超え、あらゆる分野で力を発揮しています。