児童虐待を防ぐ支援を考えよう
児童虐待が増えている日本社会
近年、児童虐待による痛ましいニュースを聞くことは珍しくありません。これにはいくつか理由があります。まず、2000年に児童虐待防止法が施行され、「民事不介入」の原則が修正されて、「虐待を受けたと思われる」状態で児童相談所が家庭に介入できるようになったことが挙げられます。また子どもの人権についての意識が高まり、児童虐待が与える心身のダメージが大人になっても消えないという、深刻さに対する認識が広まってきたことも挙げられるでしょう。
しつけという名の暴力を止めよう
児童虐待が認められた場合、多くの保護者は「しつけをしようと思った」と言います。そこにあるのは親子関係の悪循環(バッドサイクル)です。つまり最初は小さなものだった子どもの問題行動で、保護者はイライラして自制心を失い、「しつけ」という名の暴力をふるいます。暴力は一時的に子どもをコントロールできますが、長い目で見れば関係悪化は避けられません。保護者と子どもとのコミュニケーションは質量ともに低下し、子どもはさらなる問題行動を起こし、暴力も……、というサイクルです。そこで社会福祉サービスの調整を担う国家資格を持つソーシャルワーカーは、保護者にしつけやコミュニケーションを教える「ペアレントトレーニング」を行うことになります。
ソーシャルワーカーにできること
また保護者から子どもを引き離した方がよい場合もあり、児童養護施設や里親制度を使うこともあります。もちろん保護者から離れた子どもは心身ともにダメージがあるためケアが必要です。あえて問題行動を起こす「試し行動」が激しく、養育するのが困難な場合もあります。そこで、育てる側・育てられる側双方の思いを聞き、環境面での改善をはかるなど、具体的な問題解決を通して望ましい状態を実現していくソーシャルワーカーの仕事が重要になります。起こった現象に対処するだけでなく、それが起こる原因となっている人同士の関係性をひもとくことが求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
福山市立大学 教育学部 児童教育学科 教授 野口 啓示 先生
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