子どもの心に寄り添い、自己肯定感を高める臨床心理学
日本の子どもは自尊感情が低い?
ありのままの自分を、かけがえのない存在として大切にする気持ちを「自尊感情」「自己肯定感」といいます。ほかの国と比較して、日本の子どもたちは自尊感情が低いという調査結果が出ています。特に思春期は自己嫌悪に陥ったり、悩みを抱えたりしやすい時期で、学校では子どもたちの自己肯定感を高める取り組みに力を入れています。そのため児童・生徒へのアンケートなどから成長段階ごとに心の状態を解き明かし、自己肯定感を高めるにはどうしたらよいかを考える研究が行われています。
自己肯定感をどう測るか
自己肯定感が高いか低いかを心理学的に判断するときには、アメリカのローゼンバーグが1965年に発表した「自尊感情尺度」が広く使われています。
東京都の委託で行われた研究では、「自分のことを好きか」などの“自己評価・自己受容”、「みんなの役に立ちたいと思うか」など“(他者との)関係の中での自己”、「自分のことは自分で決めたいと思うか」などの“自己主張・自己決定”という3つの柱をもとに質問を構成しています。回答結果を三角形のチャートに表し、その人の自己肯定感の傾向を分析します。その調査結果をもとにした児童生徒理解や支援のためのガイドラインをまとめ、子どもの自己肯定感につなげています。
研究結果を実社会に還元する
心理臨床実践や調査研究を通して人の心を理解し、課題や困難がある場合はどのようなサポートや心のケアができるかを考えるのが臨床心理学です。学校現場では教員や保護者にも話を聞きながら、教育心理学や発達心理学なども含めて幅広い領域で研究を深めます。臨床心理学を含む応用心理学という学問分野の特徴の一つとして、調査・分析をするだけでなく、得られた結果を現場での実践にどう生かすかまでを考えるということが挙げられます。変化の激しい時代で、子どもたちの心はさまざまなことに影響を受けています。心理学には、子どもたちの健やかな成長を支える役割が期待されているのです。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 生活環境学部 心身健康学科 教授 伊藤 美奈子 先生
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