英語力向上の秘訣は「メモ」にあり!

激変した英語教育
かつての高校での英語教育は、文法を日本語で解説して、単語や作文のテストで記憶力を評価するのが主流でした。それが2008年の学習指導要領の改訂により、「授業は英語で行うこと」が基本とされました。教師自身が習得したときとは大きく異なる指導や評価が求められることとなり、戸惑いや試行錯誤が続きました。その中で、「音読」の活用に注目が集まりました。さらに、音読の際に生まれる「聞く」や「メモをする」といった行動の意義も見直されるようになりました。そうしたプロセスに着目した学習法が、「ディクトグロス」です。
ディクトグロスとは
ディクトグロスは、オーストラリアの言語学者が提唱した学習法です。学習者は英語の音声を聞きながら、重要だと思われる語句や表現を英語でメモします。その後、グループでそれぞれのメモを共有して、元の文章を復元していくのです。一語一句を正確に書き取る「ディクテーション」に対して、ディクトグロスは内容の要点を判断してメモする点に特徴があります。初めのうちは、メモの内容は学習者によってバラバラです。それが繰り返し取り組むことで重要ポイントを聞き取る力が育ち、徐々に同じになってくるのです。
英語音声の題材は、全く新しい内容よりも、既に習った英文のまとめや身近な話題の方が、学習者の意欲を高めやすいというデータもあります。また、社会科などの他教科とつながりのあるテーマを取り上げることも有効です。
成長を実感できる学習を
ディクトグロスを用いた授業の実践例は増えており、評価方法や教材づくりの研究も活発です。評価方法については、「メモの数」といった量的な評価に加えて、学習者自身の気づきや振り返りを記録してもらう「ポートフォリオ型」の評価方法も注目されています。このポートフォリオは学習者が見返すことで、自分の成長を実感できる点でも有効です。ディクトグロスはリスニング力のほかに、要約力や協働的な学びを育む方法として、大きな可能性を秘めているのです。
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金沢星稜大学人文学部 国際英語学科 教授前田 昌寛 先生
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