ロボット競技会から生まれる、より良い社会のための実装技術

ロボット競技会から生まれる、より良い社会のための実装技術

技術開発を促進する競技会

達成が難しそうな目標を掲げることで技術開発を促進するプロジェクトを「ランドマークプロジェクト」と呼びます。代表的な例に、1960年代に人間を月面に送ることを目標として実施されたアポロ計画があります。一方、ロボット研究の分野でも各種の競技会が開催されており、同様な役割を果たしています。例えば、サッカーロボットの競技会ロボカップは「2050年にワールドカップのチャンピオンと対戦する」ことを目標にしています。私たちの生活に直接関係しない目標に見えますが、多数の参加者が多様な視点からこの目標に取り組む過程から、自立搬送ロボットのための技術や照明を認識する技術などが開発されてきました。

トマトロボット競技会

具体的な社会課題をテーマとしたロボットの競技会も多数開催されています。農業分野の深刻な労働力不足の解決をめざす、トマトの収穫ロボットの競技会もその一つです。実際のトマト農場で、適切な熟れ具合のトマトをできるだけ短時間に収穫することが目標です。目標達成のためには、トマトの畝の間の移動、熟れ具合の判断をはじめとするさまざまな能力が必要です。そのために開発されたモニタリングと予測の技術は、実用化に向けて九州のトマト農場で試験運用が始まっています。

社会で活躍するロボットをつくる

大気汚染対策や化石燃料の利用削減に向けて、世界的に電気自動車へのシフトが進んでいます。しかし、充電設備を全国津々浦々に設置することは難しいのが実情です。そこで、動力源として単三充電式ニッケル水素電池6本使用する、超小型かつ軽量の一人乗り3輪以上の電気自動車の競技会が開催されています。現在は平らな道をゆっくりと走れる段階ですが、将来的には地方のモビリティとなることが期待されています。
社会で活躍するロボットをつくるには、社会課題を的確に捉えることが大切です。競技会の形でテーマを掲げることで関心が高まり、多くの人が関わることで大きなイノベーションが生まれていくのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

西日本工業大学 工学部 総合システム工学科 電気情報工学系 教授 武村 泰範 先生

西日本工業大学 工学部 総合システム工学科 電気情報工学系 教授 武村 泰範 先生

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ロボット工学、人工知能

先生が目指すSDGs

メッセージ

工学は実学であり、その本質は、社会課題をしっかりと捉えて技術をどう活用するかを考えるところにあります。それができる人材になるには、数学や物理学だけではなく、経済や社会に関する知識を身に付け、多様な視点から問題を把握する能力が必須です。また、ChatGPTのような生成AIを活用するには、やらせたいことを的確に表現できる国語力が欠かせません。工学の道を志すなら、時事問題を的確に捉えたり、国語力を鍛えたりすることをおろそかにせず、社会に役立つ研究のできる人になってほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

西日本工業大学に関心を持ったあなたは

1967年、「人を育て技術を拓く」をモットーに、苅田町に工学部を開設。機械工学・電気情報工学・土木工学分野の高度な専門技術を学びます。2016年には次世代のロボットや自動車の開発者を育てる知能制御コースを新設しました。また、北九州市の中心市街地にある小倉キャンパス[デザイン学部]には、建築学科と情報デザイン学科を設置。「工学」と「デザイン」を融合させた教育、研究を推進し、「知と地の創造拠点」を目指し、地域・行政・企業との連携で地域の課題解決に取り組み、社会のニーズに合ったエンジニアを育みます。