コロンビアの農民が麻薬の原料となる違法作物を栽培する理由

コロンビアの農民が麻薬の原料となる違法作物を栽培する理由

開発の光と影

コカインという麻薬は南アメリカ、特にコロンビアで大量に生産されています。原料はコカという植物の葉で、農民たちは合法の野菜と同じように畑で一生懸命栽培しています。コロンビアはコーヒーなどの農産物が有名ですが、これらが栽培される地域の土地はごく一部の富裕層が独占しており、政府の支援もあって流通のための道路や電気・水道といったインフラも整えられています。一方で貧しい農民たちの土地は、痩せているだけでなく収穫物の出荷もままならない、いわゆる「辺境」にあり、生活のためにコカ栽培に手を出すケースが少なくないのです。

広がる麻薬問題

こうした格差や麻薬の問題は、紛争にもつながっています。コロンビアには1960年代から現在にいたる長い武力紛争が存在しています。もともとは少数の富裕層と、農民を始めとする貧困層の間にある格差や不平等を問題視した左翼ゲリラと政府との争いでしたが、やがて左翼ゲリラに対抗して右翼の武装組織が結成され、さらには麻薬組織も絡んで、紛争は複雑かつ長期化しました。政府と闘うこれらの非合法組織には麻薬という資金源があるため、武器や戦闘員を増やして強大化し、紛争はなかなか終結には至りません。紛争や麻薬問題の解決には、格差の問題や農村開発に取り組む必要があるのです。

フィールドワーク(現地調査)で見えてくるもの

現在、コカインは世界で1300万人が使用し、さまざまな犯罪の要因にもなっています。コカイン生産の起点にいるのがコカの葉を栽培する農民ですが、大半の農民は生活のためにやむなく行っており、後悔している人も数多くいます。また、コカイン生産に関わって得た収入で子どもが大学に進学し、その子どもが成人して違法作物に代わるカカオやコーヒーなどの作物の栽培促進に関わっている、といった事例もあるのです。こうした現実の過酷さや複雑さは、文献やインターネットの情報で知ることはできません。辺境に足を運び、当事者から直接話を聞いていくことで、より現実に即した支援のあり方が見えてくるのです。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 外国語学部 外国語学科 准教授 千代 勇一 先生

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開発人類学、ラテンアメリカ地域研究

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メッセージ

近年、若者の海外志向が停滞しているように感じます。そのような中でも、本学の外国語学部の学生は全員が海外留学を経験し、皆たくましくなって帰ってきます。確かに知識や情報はインターネットやテレビからも得られますが、さまざまな国・地域で直接得られる経験はかけがえのないものです。あなたにもぜひ「外」に目を向けてほしいのです。留学も含めて、大学生の期間にはそのときにしかできないことがあるはずです。大学では知りたいこと、探究したいこと、そしてやってみたいことを貪欲に、思う存分追究してほしいです。

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医療系・文系・理系と幅広い分野の10学部32学科を擁する総合大学です。文系学部を中心とした八王子キャンパスでは、約15,000人の学生が学んでいます。東京多摩丘陵の自然豊かな景観に位置し、キャンパスリニューアルにより新校舎棟「SORATIO SQUARE(ソラティオスクエア)」「帝京大学総合博物館」をはじめとした、施設・設備が整備され、教育指針である「実学」「国際性」「開放性」を柱に、自ら未来を切り拓く人材を育成しています。