文字の配列や空白が語る、現代詩の面白さ

文字の配列や空白が語る、現代詩の面白さ

詩には多様な表現方法がある

「詩」は文字で書かれ、その内容や響きが詩人の思想・感情を表現するものだと、とらえられているかもしれません。しかし、詩には、もっと多様な表現方法があります。「これが果たして詩なのか」という問いが出てくるような作品がたくさん作られています。

現代詩人エドウィン・モーガンの作品

スコットランドの現代詩人エドウィン・モーガン(1920年グラスゴー生まれ)の詩には、さまざまな仕掛けが施されています。その一つ"Warning Poem"(警告詩)を見てみましょう。全部で58行の最初の1行は"this poem is going to be cut off by a"、最後の1行は"triangular shark’s fin biting into it"。この2行を続けると「この詩は三角形のサメのひれに削り取られるだろう」という意味になります。2行目から28行目までは最後の一文字ずつ少なくなっていき、29行目からは1文字ずつ増えていき、最終行が先に紹介した"triangular shark’s..."になります。そうです。詩の右側に大きな三角形の空白、つまりサメのひれに削り取られたあとができるのです。

書かれなかった部分に表現性をもたせる手法

この詩は、印刷されたときにできる三角形の空白に意味を持たせた作品です。このように、文字の配列や彩色などの視覚的要素に注目する詩、「視覚詩」は、1950年代~60年代に「具体詩」として世界中で流行しました。日本でも草野心平がそうした作品を書いています。
モーガンはこのほかにも、"Dogs Round a Tree"(木の周りを回る犬)--"bowwow!"という犬の鳴き声を示す単語を使って、文字列がまるで木の周りで遊ぶ犬のように見えてくる作品--や、死の瞬間を想起させる作品、"The Moment of Death"なども書いています。
詩にはこのように多様で斬新な表現を駆使した作品がたくさんあるのです。

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東京大学 教養学部 地域文化研究学科 教授 中尾 まさみ 先生

東京大学 教養学部 地域文化研究学科 教授 中尾 まさみ 先生

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文学、地域文化研究

メッセージ

「詩」というと、教室で習うもの、文学研究の対象となるものと思いがちですが、アイドルの歌の歌詞も「詩」であることに変わりはありません。詩のなかに、勉強するものとか、楽しむためのもの、などというランク付けはないので、ぜひ、いろいろな詩に接してもらいたいと思います。また、高校生のときは、大人が思いもよらない斬新な発想ができるものです。ですから、自信を持って、「自由に思考すること」を恐れないでほしいと思います。

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