生物はどのようにして多様な種になった? 性染色体の変化に注目

生物を多様にした「種分化」
地球上に暮らす多様な生き物は、歴史をさかのぼると共通の祖先から分かれていったと考えられています。同じ集団の中から別の特徴を持つ集団が生まれ、独立した「種」になっていく現象を「種分化」といいます。しかし、人間を含めた多くの生物でどのように種分化が起きたのか、まだわかっていません。
日本近海にしかいないニホンイトヨ
北半球に広く生息するイトヨという魚の仲間を見てみましょう。イトヨは、日本では太平洋沿岸から本州や北海道の内陸地などに暮らしています。一方で、ニホンイトヨというイトヨの仲間は、日本海やオホーツク海沿岸などに分布している別種です。ニホンイトヨとイトヨの外見はほぼ同じですが、オスが求愛の際に踊るダンスの様子や、性染色体が異なることがわかりました。イトヨの性染色体はメスがXX、オスがXYを持っています。しかしニホンイトヨのオスは、もともとは性染色体ではなかった第9番染色体の一つとY染色体が融合した新たな「ネオY染色体」を持つことがわかりました。オスとメスで染色体の数が違うという面白い特徴があります。第9番染色体は、ニホンイトヨの求愛行動の違いにも影響を与えていました。また、ニホンイトヨのメスとイトヨのオスを掛け合わせて生まれた雑種のオスは、精子を作れなくなり、子孫を残せないこともわかりました。
性染色体ターンオーバーの解明
こうした性染色体と常染色体の一つが融合するという現象は、魚類や爬虫(はちゅう)類においては珍しい現象ではなく、しかも種分化の要因になっている可能性があります。初めのうちは集団内に祖先の性染色体を持つ個体と、ネオY染色体のように新たな性染色体を持つ個体が同じ種として共存します。しかし何らかの原因で新たな性染色体を持つ個体が増加すると、やがてはその集団内の性染色体が新しいものに完全に入れ替わるかもしれないのです。この「性染色体ターンオーバー」という現象を再現し、種分化や生物の進化との関係を明らかにしようと、研究が進められています。
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