生物多様性の起源に迫る

生物多様性の創出メカニズム
ガラパゴス諸島に棲む鳥類・ダーウィンフィンチや東アフリカの古代湖の魚類・シクリッドに代表されるように、生物の多様化を促す生物間相互作用(生物同士の関係性)としては「資源をめぐる競争(競争)」が重要と一般に考えられています。生態系に存在する生物間相互作用は「共生」や「寄生」などのように「競争」のほかにもたくさんあります。しかしながら、それらが生物の多様化にどのように寄与しているのかは未だ詳しくわかっていません。とりわけ「捕食者-被食者間相互作用(食う食われるの関係)」は、自然界で最も普遍的な生物間相互作用と言えますが、捕食者が被食者の多様性に与える影響は十分に実証されていません。
オサムシとカタツムリの攻防と進化
北海道に生息するヒメマイマイとエゾマイマイは表現型(色や形、大きさ、行動形質などの姿かたち)が顕著に異なっていますが、DNA 解析により両者は非常に近縁であることがわかりました。遺伝的な差異をほとんど蓄積させないほど急激に、全く異なる姿を持つ 2種へ分化したことを示しています。野外における定量調査や同位体比分析など詳細な解析を行った結果、驚くべきことに両種は同じ場所で同じ餌を食べ、共存していることがわかりました。つまり、種間の競争により種分化したのではないと考えられます。他方で、捕食者であるオサムシに対しては、ヒメマイマイが殻の中に隠れる籠城型であるのに対し、エゾマイマイは殻を振り回して戦う攻撃型の戦略を取っていることが明らかになりました。
捕食者による被食者の多様化
さらに、エゾマイマイと外見がそっくりな攻撃型のカタツムリがロシアでも独自に進化していることも判明しました。別系統の種が似通った特徴を獲得する「平行進化」の新事例です。籠城型と攻撃型の中間的な形状のカタツムリがオサムシに食べられた結果、ヒメマイマイとエゾマイマイという両極端の戦略を持つ種に分化したと考えられます。捕食者が被食者の多様化に寄与することを示す貴重な実証研究と言えます。
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