講義No.15838 生物学

生物多様性の起源に迫る

生物多様性の起源に迫る

生物多様性の創出メカニズム

ガラパゴス諸島に棲む鳥類・ダーウィンフィンチや東アフリカの古代湖の魚類・シクリッドに代表されるように、生物の多様化を促す生物間相互作用(生物同士の関係性)としては「資源をめぐる競争(競争)」が重要と一般に考えられています。生態系に存在する生物間相互作用は「共生」や「寄生」などのように「競争」のほかにもたくさんあります。しかしながら、それらが生物の多様化にどのように寄与しているのかは未だ詳しくわかっていません。とりわけ「捕食者-被食者間相互作用(食う食われるの関係)」は、自然界で最も普遍的な生物間相互作用と言えますが、捕食者が被食者の多様性に与える影響は十分に実証されていません。

オサムシとカタツムリの攻防と進化

北海道に生息するヒメマイマイとエゾマイマイは表現型(色や形、大きさ、行動形質などの姿かたち)が顕著に異なっていますが、DNA 解析により両者は非常に近縁であることがわかりました。遺伝的な差異をほとんど蓄積させないほど急激に、全く異なる姿を持つ 2種へ分化したことを示しています。野外における定量調査や同位体比分析など詳細な解析を行った結果、驚くべきことに両種は同じ場所で同じ餌を食べ、共存していることがわかりました。つまり、種間の競争により種分化したのではないと考えられます。他方で、捕食者であるオサムシに対しては、ヒメマイマイが殻の中に隠れる籠城型であるのに対し、エゾマイマイは殻を振り回して戦う攻撃型の戦略を取っていることが明らかになりました。

捕食者による被食者の多様化

さらに、エゾマイマイと外見がそっくりな攻撃型のカタツムリがロシアでも独自に進化していることも判明しました。別系統の種が似通った特徴を獲得する「平行進化」の新事例です。籠城型と攻撃型の中間的な形状のカタツムリがオサムシに食べられた結果、ヒメマイマイとエゾマイマイという両極端の戦略を持つ種に分化したと考えられます。捕食者が被食者の多様化に寄与することを示す貴重な実証研究と言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

弘前大学 農学生命科学部 生物学科 生態環境コース 准教授 森井 悠太 先生

弘前大学 農学生命科学部 生物学科 生態環境コース 准教授 森井 悠太 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

進化生態学

メッセージ

様々な分野の学問や芸術に触れ、失敗を恐れず挑戦し、自身の世界を広げる努力をすると良いと思います。若いあなたはまだ、自らの進む道を選べないことも多いでしょう。そのような時は、先入観を捨てて気になることを何でもやってみると良いと私は思ってます。様々な経験を経ることで自身の興味に自ずと気づき、自主性も育まれることと思います。自身の定めた目標に対して手を抜かず取り組むことが大切です。失敗することも当然ありますが、失敗こそが人生の糧になるものです。日々を目一杯楽しんで、巨人・偉人になってください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

弘前大学に関心を持ったあなたは

弘前大学は、人文社会科学部、教育学部、医学部、理工学部および農学生命科学部の5学部からなる総合大学で、すべての学問の基礎的領域をカバーしています。
この総合大学という特性を生かして、本学では教養教育と専門基礎教育を重視した教育を行い、これからの社会に対応できる人材を育成することを目的としています。
本学の学生は、歴史と伝統のある文化の香り高い弘前市で学びながら、地域の自治体や企業などと連携し、さまざまな活動に積極的に参加しています。