
北大のDNA―4つの基本理念

北海道大学が大切にしてきた価値観は、しばしば「北大のDNA」と表現される。このDNAとは、長い歴史の中で自然に受け継がれてきた学風や考え方を指す。それらは、「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」「実学の重視」の4つの基本理念に結実している。
「フロンティア精神」とは、未知の領域に対して恐れずに挑戦する姿勢である。北海道大学の前身である札幌農学校は、寒冷地において新しい農業や科学を実践する必要があった。そのため、既存の知識をなぞるのではなく、自ら考え、新しい方法を切り拓くことが求められた。
「実学の重視」とは、単なる理論の探究にとどまらず、現実社会の課題にどう応用できるかを重視する。農業、環境、資源、医療といった分野で、知識を「使える形」にするという姿勢は、現代においてますます重要性を増している。
「全人教育」は、自由な学風に裏打ちされている。学問分野の垣根が比較的低く、学生や研究者が主体的にテーマを選び、挑戦できる環境が整っている。この自由さが、新しい発想や分野横断的な取り組みを生み出してきた。
加えて、北海道大学は日本における最初期の学位授与機関の一つとして、高等教育の歴史の中で重要な役割を果たしてきた。このような歴史的背景も含めて、「自ら考え、挑戦し、社会に役立てる」という文化が、「北大のDNA」として現在まで受け継がれているのである。

創基150周年とSecond Ambitious Challenge
2026年、北海道大学は創基150周年という大きな節目を迎えた。このタイミングで掲げているのが「Second Ambitious Challenge(セカンド・アンビシャス・チャレンジ)」という考え方である。
「Ambitious」という言葉は、もともと札幌農学校の精神を象徴する言葉として知られている。最初のAmbitiousは、寒冷地という厳しい環境で、新しい社会や学問を築くという大きな志であった。それに対してSecond Ambitious Challengeは、その伝統を受け継ぎながら、現代の課題に対して新たな形で挑戦することを意味している。
現代社会では、単一の地域や国だけでは解決できない問題が増えている。気候変動、エネルギー問題、食料不足などは、その典型である。Second Ambitious Challengeとは、こうした地球規模の課題に対して、北海道大学が持つ知と人材を結集し、世界に貢献していこうとする意思表示である。
国内最高のサステイナビリティ
Second Ambitious Challengeの中で、特に重要なテーマとして位置づけられているのが「サステイナビリティ(持続可能性)」である。現代の世界が直面している課題の多くは、このサステイナビリティに関わっている。例えば、気候変動による異常気象、エネルギー資源の枯渇、人口増加に伴う食料問題などである。これらの問題は相互に関連しており、一つの分野だけで解決することはできない。
ここで「北大のDNA」が重要になる。「フロンティア精神」は、未解決の問題に対して新しいアプローチを生み出す原動力となる。「実学の重視」は、理論だけでなく実際の社会に適用可能な解決策を導く。そして北海道大学の自由な学風は、分野を越えた協働を可能にする。
北海道という地域もまた、サステイナビリティを考える上で大きな意味を持つ。広大な土地、豊かな自然、農業や水産業といった基幹産業は、持続可能な社会のモデルを実践的に検証する場となる。北海道大学はこの環境を活かし、サステイナビリティを単なる理念ではなく、現実の取り組みとして具体化しているのである。
SDGsの枠組で世界の大学を評価する「THEインパクトランキング2025」では、北海道大学は世界44位、6年連続国内1位として、客観的に高い評価を得ている。

半導体と北海道における北海道大学の役割
サステイナビリティを実現するためには、それを支える技術が不可欠である。その中でも特に重要なのが半導体である。
半導体は、現代のあらゆる技術の基盤となっている。例えば、再生可能エネルギーを効率よく利用するための電力制御、環境データを収集するセンサー、農業を高度化するスマート技術など、サステイナビリティに関わる多くの分野で半導体が使われている。言い換えれば、半導体がなければ持続可能な社会の実現は極めて困難である。
この分野においても、「北大のDNA」は大きな力を発揮する。半導体は物理、化学、材料科学、情報工学など多くの分野が関わる学際的な領域であり、自由で横断的な研究環境と相性が良い。また、実学志向により、単なる基礎研究にとどまらず、社会実装まで視野に入れた取り組みが進められている。
さらに現在、北海道は次世代半導体産業の新たな拠点として注目されている。同時に、北海道は農業・食料供給の重要地域であり、再生可能エネルギー(GX)や気候変動対策の最前線でもある。このような多様な要素が重なる中で、北海道大学は研究・教育・産業連携の中心として重要な役割を担っている。


