アスリートを支える鍼(ハリ)のチカラ

アスリートを支える鍼(ハリ)のチカラ

アスリートを支える鍼のメカニズム

アスリートが抱える悩みの一つに、怪我による痛み、筋の張りがあります。鍼治療には、この悩みを解消するメカニズムがあります。例えば、鍼に電極を繋いで電気刺激を手足のツボに行うと脳内の内因性オピオイドという鎮痛作用のある物質が放出され痛みが緩和されます。また、過度な運動により過緊張を起こしている筋では血流が減少し、発痛物質がパフォーマンスにも悪影響を与えます。鍼治療をその部位に行うと軸索反射(じくさくはんしゃ)を通して、筋の血管を拡張するための物質が放出され、筋の血流が改善し、筋の張りの緩和・発痛物質の除去が起こると考えられています。

スポーツの場面における鍼

スポーツの祭典であるオリンピック・パラリンピックでは、大会期間中に選手村の施設で鍼治療が行われています。また、スポーツ現場で活躍するアスレティックトレーナーの39.6%が鍼灸(しんきゅう)師の資格を保有していると報告されており、鍼治療は多くのアスリートを支えています。アスリートは国内外への長時間の移動、時差、過密スケジュールなど多くのストレスを抱えています。そのため、鍼治療を活用したコンディショニングは、身体の疲労、睡眠、生理痛などの症状にも用いられています。あなたが知っているアスリートも実は鍼治療に支えられているかもしれません。

スポーツチームでの鍼の意義

スポーツチームでは、いかに怪我から早期に競技復帰をさせるか、怪我の予防が重要な課題の一つです。過去の研究では、怪我をしたアスリートの競技離脱の総日数が少ないチームの方が、年間の競技成績が良かったという報告があります。鍼治療により痛みや筋の張りを緩和させ、早期の競技復帰や怪我を予防することで、最終的には鍼治療を通してチームの勝利に貢献するかもしれません。
まだ鍼治療は、「痛い!」「怖い!」というイメージがあります。鍼治療のメリットやリスクについても研究を通して正しい情報を伝えていく必要があるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 准教授 藤本 英樹 先生

東京有明医療大学保健医療学部 鍼灸学科 准教授藤本 英樹 先生

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鍼灸学、スポーツ医学

メッセージ

鍼治療は患者さんの症状やその背景も含め、詳しく話を聞き治療を進めていきます。アスリートの場合も同じです。怪我の原因は何なのかを出来る限り詳しく聞いたり、身体の状況を確認します。この分野を学ぶ最初の一歩は自分の身体に興味を持つことです。例えば、たくさん歩くと「どこが疲れるか?」「どこを押すと痛いか?」など人によって違います。同じように歩いているのになぜでしょうか。そんな疑問を持つことがアスリートを支えるために重要な視点です。一緒に学んでみませんか。

先生への質問

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東京有明医療大学は、保健医療学部(鍼灸学科・柔道整復学科)と看護学部(看護学科)の2学部3学科より構成され、鍼灸師・柔道整復師・看護師・保健師・アスレティックトレーナーを育成しています。
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