有人宇宙探査:月面を世界初の有人ローバーで探査する!

月で生活しながら探査するモビリティの開発
JAXAでは、世界初となる居住型の月面探査車「有人与圧ローバー」の開発が進められています。このローバーは、宇宙飛行士2人が滞在できるよう、約9㎥の居住空間に寝台や宇宙服の保管スペース、探査や生命維持に必要な装置が備えられています。
打ち上げ目標は2031年度、目的地は月の南極域です。1年に1回、約1カ月間有人探査を行い、無人のときも自動運転で運用し、運用期間10年、総走行距離1万kmをめざしています。南極域をめざす理由は、月や地球の成り立ちを解き明かすヒントがあると期待されているからです。探査では、岩石を持ち帰るサンプルリターン、月の地震を調べるための月震計の設置、さらには大気のない環境を生かした天文観測の、3つの科学ミッションが計画されています。
過酷な月面環境に耐えるには
この「有人与圧ローバー」の開発に必要な技術開発は、多岐にわたります。地球の1/6の重力環境で、月の表土上を走るための技術のほか、展開収納可能な太陽電池パドルや越夜(えつや)時の燃料電池システムによる月面での発電技術、月の昼夜環境による寒暖差の激しい温度環境に耐えるための熱制御技術などがあります。また月には大気がないため、大気と磁場によって遮蔽(しゃへい)を受ける地球とは異なり、宇宙からの放射線が直接降り注ぎます。ローバーの電子部品はこの放射線にさらされ続けるため、放射線耐性があるものを選び出す地道な評価作業も続けられています。
月から火星へ、人類の新たな挑戦
「有人与圧ローバー」の開発は、米国が主導する国際宇宙探査「アルテミス計画」への日本の貢献として位置づけられています。同計画は、2030年代に火星有人着陸を目標に掲げており、月面長期居住システムの実現は、人類の活動領域を月から火星へと広げるための重要なステップになることが期待されています。
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