隕石を見れば、宇宙の歴史がわかる! 天体衝突の証拠を探る

隕石は宇宙の歴史の宝庫
太陽系が生まれた直後の宇宙では、小さな物質が集まってだんだんと大きな塊になることで、いくつもの天体がつくられていきました。その過程では、必ず物質同士の「衝突」が起きています。衝突がいつ、どのように起きたのかを明らかにすれば、太陽系が現在の姿になるまでの歴史がわかるかもしれません。手がかりとなるのが地球に落下してきた隕石(いんせき)です。隕石は衝突によって生じた天体の破片で、宇宙に関する情報が詰まっています。
月の石に残る衝突のあと
例えば南極や砂漠で回収された月の隕石です。電子顕微鏡で観察すると、月で起きた大規模な衝突の記録が残されていることがわかりました。隕石の中に含まれているシリカという鉱物が、通常では見られない変化をしていたからです。シリカは非常に高い圧力と温度を受けると、性質や密度が変化して「高圧鉱物」と呼ばれる状態になります。地球上では、隕石の落下によってできたクレーターなどで高圧鉱物が見られます。それだけ高い温度と圧力が必要になるため、隕石に含まれる高圧鉱物は宇宙で激しい衝突が起きた証拠になるのです。
隕石の時計を分析
また、岩石はそこに含まれる放射性元素の半減期を利用することで、できた時期を推定できます。これを「放射年代」といいます。放射年代の特徴は、天体衝突のように非常に高い温度が加わる出来事があると、時計の針がリセットされることです。つまり隕石の放射年代を調べれば、衝突が起きた年代を推定できるというわけです。
前述の月の隕石も、放射年代の分析が行われました。その結果、約27億年前に大規模な天体衝突が起きて生じた隕石だと判明したのです。月では39~41億年前の間、激しい天体衝突が続いていたと考えられてきました。しかしこの発見により、その衝突は少なくとも27億年ほど前までは続いていた可能性が出てきました。このように、隕石を詳細に分析して宇宙の歴史に関する新たな手がかりを見つけようと、研究が続いています。
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先生情報 / 大学情報

広島大学理学部 地球惑星システム学科 准教授宮原 正明 先生
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地球惑星科学、地球宇宙化学先生が目指すSDGs
先生への質問
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