講義No.14713 地球科学

隕石を見れば、宇宙の歴史がわかる! 天体衝突の証拠を探る

隕石を見れば、宇宙の歴史がわかる! 天体衝突の証拠を探る

隕石は宇宙の歴史の宝庫

太陽系が生まれた直後の宇宙では、小さな物質が集まってだんだんと大きな塊になることで、いくつもの天体がつくられていきました。その過程では、必ず物質同士の「衝突」が起きています。衝突がいつ、どのように起きたのかを明らかにすれば、太陽系が現在の姿になるまでの歴史がわかるかもしれません。手がかりとなるのが地球に落下してきた隕石(いんせき)です。隕石は衝突によって生じた天体の破片で、宇宙に関する情報が詰まっています。

月の石に残る衝突のあと

例えば南極や砂漠で回収された月の隕石です。電子顕微鏡で観察すると、月で起きた大規模な衝突の記録が残されていることがわかりました。隕石の中に含まれているシリカという鉱物が、通常では見られない変化をしていたからです。シリカは非常に高い圧力と温度を受けると、性質や密度が変化して「高圧鉱物」と呼ばれる状態になります。地球上では、隕石の落下によってできたクレーターなどで高圧鉱物が見られます。それだけ高い温度と圧力が必要になるため、隕石に含まれる高圧鉱物は宇宙で激しい衝突が起きた証拠になるのです。

隕石の時計を分析

また、岩石はそこに含まれる放射性元素の半減期を利用することで、できた時期を推定できます。これを「放射年代」といいます。放射年代の特徴は、天体衝突のように非常に高い温度が加わる出来事があると、時計の針がリセットされることです。つまり隕石の放射年代を調べれば、衝突が起きた年代を推定できるというわけです。
前述の月の隕石も、放射年代の分析が行われました。その結果、約27億年前に大規模な天体衝突が起きて生じた隕石だと判明したのです。月では39~41億年前の間、激しい天体衝突が続いていたと考えられてきました。しかしこの発見により、その衝突は少なくとも27億年ほど前までは続いていた可能性が出てきました。このように、隕石を詳細に分析して宇宙の歴史に関する新たな手がかりを見つけようと、研究が続いています。

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先生情報 / 大学情報

広島大学 理学部 地球惑星システム学科 准教授 宮原 正明 先生

広島大学理学部 地球惑星システム学科 准教授宮原 正明 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

地球惑星科学、地球宇宙化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の取り組んでいる研究には、顕微鏡を使って宇宙のはるかかなたで起きた一瞬を見る、というロマンがあります。まだまだ研究が必要な隕石や宇宙の謎がたくさん残っているので、宇宙科学を進路に選んでもらえると嬉しいです。ただし宇宙科学は理系の応用分野なので、基礎がなければ難しい部分が多いと思います。まずは高校までで習う物理や化学、数学などをしっかり勉強するとよいでしょう。専門的な内容は大学でたくさん学べますので、それを楽しみに高校の勉強もがんばってほしいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

広島大学に関心を持ったあなたは

広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。