
東北大×JAMSTEC 国際多分野チームの挑戦
地球温暖化は、海水温上昇、海洋酸性化、生物多様性の損失など、海洋と私たちの暮らしへ大きな影響を及ぼしています。2024年設立の変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)は、複雑な海洋環境と生態系の変動メカニズムを物理学・生態学・数理科学の融合で解明し、予測することを目指すWPI初の複数ホスト型拠点(拠点の設置・運営のための支援・設備を行う大学・機関が複数あるWPI拠点)です。初の国際卓越研究大学に認定された東北大学の教育・研究基盤と、海洋研究を世界的にリードする海洋研究開発機構(JAMSTEC)の観測船やスーパーコンピュータなど研究設備を組み合わせ、専門家が分野の垣根を超えて共同研究を展開します。ハワイ大学マノア校を海外サテライト拠点と位置付け、世界の第一線で活躍する多数の海外出身者からなる国際的なネットワーク環境によって高等教育も促進します。WPI-AIMECで研究するには、東北大学の大学院で理学·農学·生命科学·情報科学·工学いずれかの研究科に所属する必要があります。大学院進学後に、環境・地球科学国際共同大学院プログラム(GP-EES)の適用が認定されれば、地球科学を俯瞰する視野と国際的な研究力を磨くための教育や経済的サポートが受けられます。
海洋観測によるビッグデータを活用して生態系変動の予測、社会との“共創”へ
地球温暖化によって宮城の海で採れるサンマが減り、イセエビが増えた―こんなニュースを聞いたことはありませんか。環境変化が海洋生態系へおよぼす実際の影響を知るには、海洋における物理・化学と生物現象の多面性を理解することが重要です。
WPI-AIMECは自動で水温や塩分を観測できるロボット「アルゴフロート」(世界で約4,100台が稼働)の観測網を強化するプロジェクトに参画し、pHや溶存酸素濃度など、生物と関わりの深い指標にも観測を拡げています。また、水中のDNAからそこに存在する生物種を推定できる「環境DNA」の技術を用いて、市民や企業と連携しながら東北大学が運営してきた「ANEMONE DB(アネモネデータベース)」(日本沿岸や河川など約1,900地点)を活用し、海洋における生物多様性の情報を「見える化」します。
集めたビッグデータをAI・機械学習によって解析し物理や化学の観測データと統合することで、地域から全球レベルまでの海洋生態系モデルの精緻化と予測を目指します。得られた知見をもとに市民の方や水産業界、行政など社会の皆さんと対話しながら、持続可能な地球環境と人間社会に向けた共創へ貢献していきます。
※アルゴフロートやANEMONE DBのデータは2025年4月時点のもの
所長から高校生に向けたメッセージ
広角度の興味とチャレンジ精神で機会をつかもう!
高1の担任との面談で「将来は気象予報官になりたい」と言ったことを覚えています。その方面の勉強ができる大学に進み、結果的に大学4年で海洋学の研究室を配属先に選びました。気候や環境の仕組みを理解したいという目標がより明確になり、進路希望の精度が高まった結果の選択でした。現在の希望をもとに、大きな方向を決めて、思い切って進んでください。大学で学ぶうちに、あなたの地平はぐーんと広がります。広角度に興味をもって、積極的に機会をつかんでチャレンジしましょう。
