講義No.15505 経済学

経済成長に必要なものは

経済成長に必要なものは

理論研究の難しさ

経済学の理論では、「人間は合理的に行動して消費を最大化する」という仮定がしばしば用いられます。しかし、現実の社会はそれほど単純ではありません。政治や文化、偶然の出来事など、理論だけではとらえきれない要素が経済に大きく影響します。例えばアメリカのトランプ大統領の行動も、理論では予測不可能です。こうした背景を踏まえると、理論に基づく経済モデルだけでは、現実を完全に説明することは困難なのです。

経済成長はどのように起きたか

そんな理論の限界を補うものの一つが「歴史」です。経済成長がどのように起きたかを歴史から学ぶことは、未来を考察する上で貴重な手がかりとなります。イギリスの経済学者のマルサスによると、人類は長らく、人口が増加すると食料供給が追い付かず、貧困状態から抜け出せない状態が続いていました。それが大きく変わったのが、イギリスの産業革命です。蒸気機関の技術が生産や輸送の現場に応用されることで、社会全体の豊かさが一気に高まりました。蒸気機関の技術自体は古代エジプトからあったものの、当時は奴隷の労働力が豊富だったため必要とされず、それが18世紀のイギリスで労働力不足という社会課題と結び付き、大きなイノベーションが起きたのです。

日本でイノベーションを起こすには

現代の日本は、高度経済成長期のような勢いが失われ、実質賃金も40年近く横ばいが続いています。経済成長の原動力として期待されるのがイノベーションです。しかし日本は、生産工程の改善といった「プロセス・イノベーション」には強いものの、新しい価値や商品を創出する「プロダクト・イノベーション」では他国に後れをとっています。これは、挑戦や起業が評価されにくい社会文化が背景にあるとも指摘されます。
こうした壁を乗り越える取り組みの一つが「産学連携」です。連携を通じて大学が企業の現場と向き合い、社会に新たな価値をもたらすための実践が続いています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

名古屋学院大学 経済学部 経済学科 准教授 秋山 太郎 先生

名古屋学院大学 経済学部 経済学科 准教授 秋山 太郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経済学、理論経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学選びも大切ですが、進んだ大学で「どう過ごすか」の方がはるかに重要です。どの大学でも、自ら問いを立てて挑戦し、失敗を重ねながら成長していくことが真の力になります。社会に出れば、出身大学よりも「何をやってきたか」が問われます。だからこそ、高校生のうちは目の前の勉強に真剣に取り組むことで、その負荷に耐えられる力を養ってほしいです。部活やアルバイトでも同じです。物事に真摯(しんし)に向き合い、自分自身を高めていきましょう。

名古屋学院大学に関心を持ったあなたは

名古屋学院大学は開学当初より、「敬神愛人」の精神に基づく一貫教育の完成を目指し、人文科学、社会科学、自然科学の各分野にわたる総合大学を志向してきました。現在では、高度化し多様化する社会のニーズに応えるために、個性豊かな9学部9学科3専攻を設置しています。人間と社会に密着した多様な領域の研究と活動を通して、真理に対する真摯な姿勢と、その探求への積極性を育て、人間愛を持って、自らの成長を社会に役立てることのできる心豊かな「国際教養人」の育成を進めています。