経済成長に必要なものは

理論研究の難しさ
経済学の理論では、「人間は合理的に行動して消費を最大化する」という仮定がしばしば用いられます。しかし、現実の社会はそれほど単純ではありません。政治や文化、偶然の出来事など、理論だけではとらえきれない要素が経済に大きく影響します。例えばアメリカのトランプ大統領の行動も、理論では予測不可能です。こうした背景を踏まえると、理論に基づく経済モデルだけでは、現実を完全に説明することは困難なのです。
経済成長はどのように起きたか
そんな理論の限界を補うものの一つが「歴史」です。経済成長がどのように起きたかを歴史から学ぶことは、未来を考察する上で貴重な手がかりとなります。イギリスの経済学者のマルサスによると、人類は長らく、人口が増加すると食料供給が追い付かず、貧困状態から抜け出せない状態が続いていました。それが大きく変わったのが、イギリスの産業革命です。蒸気機関の技術が生産や輸送の現場に応用されることで、社会全体の豊かさが一気に高まりました。蒸気機関の技術自体は古代エジプトからあったものの、当時は奴隷の労働力が豊富だったため必要とされず、それが18世紀のイギリスで労働力不足という社会課題と結び付き、大きなイノベーションが起きたのです。
日本でイノベーションを起こすには
現代の日本は、高度経済成長期のような勢いが失われ、実質賃金も40年近く横ばいが続いています。経済成長の原動力として期待されるのがイノベーションです。しかし日本は、生産工程の改善といった「プロセス・イノベーション」には強いものの、新しい価値や商品を創出する「プロダクト・イノベーション」では他国に後れをとっています。これは、挑戦や起業が評価されにくい社会文化が背景にあるとも指摘されます。
こうした壁を乗り越える取り組みの一つが「産学連携」です。連携を通じて大学が企業の現場と向き合い、社会に新たな価値をもたらすための実践が続いています。
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