講義No.15884 歯学 生物学

菌同士の会話を阻止して、虫歯・歯周病を撃退せよ!

菌同士の会話を阻止して、虫歯・歯周病を撃退せよ!

口内の微生物の生存戦略

私たちの口内には多くの細菌が存在しています。歯垢(しこう)1gには約1,000億個の細菌がいますが、これは地球人口をはるかに超え、銀河系の星の数に及ぶ膨大な数です。こうした菌たちは集団で固まることで生存を有利にしています。同じ菌ばかりが増えると必要とする栄養にも偏りが生じるため、細菌集団は「細菌Aの老廃物が細菌Bの栄養となる」といったように、相性の良い複数種類の菌で形成されています。集団は粘着性のある多糖類でバリアを設けて都市のようなものを作っており、この膜を張るシステムをバイオフィルムと呼びます。

生きるため対話する菌たち

人が満員電車のような人混みで不快感を覚えるように、細菌も数が増えすぎると居心地が悪くなります。例えば、虫歯菌は酸を出しますが、酸性に偏り過ぎた環境は菌にとっても厳しいのです。そこで菌たちが取っている戦略が、菌同士のコミュニケーション「クオラムセンシング」です。一定の密度を超えると菌が信号分子を放出して、それを合図に一斉に遺伝子の修飾に変化をもたらし、菌体を守ったりするのです。都市内には上下水道のような水路があり、離れたところにも情報が行き渡る世界が作られています。人間の立場で考えると、歯の汚れを落とすには、細菌都市の壁を物理的に破壊する必要があるといえます。一方、菌の会話を邪魔することで無害化する「クオラムクエンチング」という最先端研究も進められています。

クオラムセンシングを制御する

解明できた口内細菌の種類は、一昔前には500種類ほどだったものが、遺伝子解析技術の向上により1,000種類ほどに増えました。詳細が判明していくことで、細菌都市の構成菌がより正確にわかるようになり、クオラムクエンチングの研究も進んでいます。本研究の目下の目標は、クオラムセンシングを制御する物質を見つけ出すことです。その先の未来で、その物質を添加した歯磨き粉を日常的に使える日がやってくるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神奈川歯科大学 歯学部  教授 青山 典生 先生

神奈川歯科大学 歯学部 教授 青山 典生 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

歯周病学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今は歯学を専門とする私が高校時代に得意だったのは数学と物理でした。数学的な考え方は今の私の基盤となっていると感じていますし、歯の型取りをデジタルデバイスで行うようになった今は、物理的な考え方を応用するシーンもあります。歯学は生物や化学、物理、情報工学が交差するエキサイティングな学問です。ぜひ今は得意な科目を伸ばしてください。その知識が、あなたが歯学の世界を広げる取っ掛かりになってくれるはずです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神奈川歯科大学に関心を持ったあなたは

本学では、歯科医師に必要な知識と技術を「歯科咬合医療系」「生命科学口腔病態系」「社会歯科医療系」の3つの柱に統合し、各分野が連携することで、“何のために学んでいるのか”を明確にしています。7週を1ステージとする5Stage制の採用で、少ない科目を集中して学べるため、無理なく着実に履修できます。また、受動的に知識を得るだけでなく、自ら考え学ぶ力を養うため、参加型の能動的学修も導入しています。学生の能力を最大限に引き出し、社会に貢献できる歯科医師の育成を目指して、教職員が一体となって支援しています。