菌同士の会話を阻止して、虫歯・歯周病を撃退せよ!

口内の微生物の生存戦略
私たちの口内には多くの細菌が存在しています。歯垢(しこう)1gには約1,000億個の細菌がいますが、これは地球人口をはるかに超え、銀河系の星の数に及ぶ膨大な数です。こうした菌たちは集団で固まることで生存を有利にしています。同じ菌ばかりが増えると必要とする栄養にも偏りが生じるため、細菌集団は「細菌Aの老廃物が細菌Bの栄養となる」といったように、相性の良い複数種類の菌で形成されています。集団は粘着性のある多糖類でバリアを設けて都市のようなものを作っており、この膜を張るシステムをバイオフィルムと呼びます。
生きるため対話する菌たち
人が満員電車のような人混みで不快感を覚えるように、細菌も数が増えすぎると居心地が悪くなります。例えば、虫歯菌は酸を出しますが、酸性に偏り過ぎた環境は菌にとっても厳しいのです。そこで菌たちが取っている戦略が、菌同士のコミュニケーション「クオラムセンシング」です。一定の密度を超えると菌が信号分子を放出して、それを合図に一斉に遺伝子の修飾に変化をもたらし、菌体を守ったりするのです。都市内には上下水道のような水路があり、離れたところにも情報が行き渡る世界が作られています。人間の立場で考えると、歯の汚れを落とすには、細菌都市の壁を物理的に破壊する必要があるといえます。一方、菌の会話を邪魔することで無害化する「クオラムクエンチング」という最先端研究も進められています。
クオラムセンシングを制御する
解明できた口内細菌の種類は、一昔前には500種類ほどだったものが、遺伝子解析技術の向上により1,000種類ほどに増えました。詳細が判明していくことで、細菌都市の構成菌がより正確にわかるようになり、クオラムクエンチングの研究も進んでいます。本研究の目下の目標は、クオラムセンシングを制御する物質を見つけ出すことです。その先の未来で、その物質を添加した歯磨き粉を日常的に使える日がやってくるかもしれません。
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神奈川歯科大学 歯学部 教授 青山 典生 先生
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