歯並びのよさは何で決まる? 食生活と不正咬合の関係

縄文人と現代人の歯並び比較
歯並びが悪いことを、歯学では「不正咬合(ふせいこうごう)」といい、現代病の一つだと考えられています。なぜなら、縄文時代から現代までの日本人の骨を比較すると、過去にさかのぼるほど不正咬合が少なくなっているからです。顎の骨の大きさはそれほど変わらないものの、歯の角度が異なり、縄文人は縦にまっすぐ歯が生えている一方、現代人は内側に倒れるような角度で歯が生えているのです。この違いが、不正咬合の起こりやすさと関係している可能性があります。
歯の角度と食べ物の関係
縄文時代は固いものが中心の食生活をしていたと考えられているため、奥歯で食べ物をすりつぶす「咀嚼(そしゃく)」の習慣が身につき、不正咬合の予防につながっていたと推測できます。そこで、食べ物と顎の動きの関係を調べるために、食べ物をかんでいる時の様子がモーションキャプチャで分析されました。柔らかいものの場合、活発な咀嚼活動は見られません。一方、硬く、歯ごたえがあるものは、活発に咀嚼しなければ食べられません。また、硬いものを食べられる人とそうでない人の歯並びを比較すると、固いものを食べられない人は歯が内側に倒れるように生えており、現代人に特徴的な歯並びをしています。しかし、歯がまっすぐ生えて歯並びのいい人は、固いものを難なく食べることができていました。
不正咬合の予防をめざして
歯並びがまだ定まっていないうちから正しい咀嚼習慣をつければ、不正咬合を予防できる可能性があります。2010年頃に小学生の歯並びを調査したデータからは、成長するにつれて不正咬合が自然と治る子どもがいることがわかりました。しかし食生活がどう変化したのかは不明です。そこで小学生を対象に、食事の内容や歯の成長が継続的に観察されています。そこからは、硬い食べ物をかんでいる子どもや咀嚼能力が身についている人が少ないことがわかってきました。今後は硬いものを定期的に食べる人とそうでない人を比較して、歯並びや咀嚼能力の変化を探ろうと研究が進められています。
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