柔らかいMOF 大注目の多孔性金属錯体をさらにパワーアップ!

柔らかいMOF 大注目の多孔性金属錯体をさらにパワーアップ!

注目される新しい多孔性材料

多孔性材料とは、ナノレベルの大きさの穴がたくさん開いた材料で、消臭剤や乾燥剤など多方面で使われています。従来の多孔性材料は分子レベルで構造をデザインすることが難しく、穴のサイズは不均一でした。2025年のノーベル化学賞を受賞した「多孔性金属錯体(金属有機構造体、MOF)」は、金属イオンと有機分子が配位結合した新しい多孔性材料です。規則正しい格子状の構造であるため穴の大きさは均一で、金属イオンと有機分子のさまざまな組み合わせにより自由な分子構造のデザインが可能です。すでに12万種以上のMOFが作られており、ガスの吸収をはじめ多彩な機能を発揮しています。

柔らかいMOF

これまでに作られたMOFは剛直なものがほとんどですが、金属イオンと有機分子の組み合わせや格子の組み方を工夫することで、構造が変化する「フレキシブルなMOF」を作ることができます。もともと高機能なMOFに柔軟性や応答性を加えることで、さらに機能を拡張できると期待されます。
柔軟なMOFの用途の例として、工場の排ガス中にあるCO₂の吸着分離があります。剛直なMOFは構造が変化しないので、CO₂の着脱は加圧・減圧に伴い徐々にしか進みません。これに対し柔軟なMOFは、圧力がしきい値に達すると穴が閉じた状態から構造が変化し、穴が開いて一気にCO₂を吸着します。そして減圧するとCO₂を吐き出します。少しの加圧・減圧で着脱ができるため、エネルギー効率の高いガスの分離が可能なのです。

柔軟性で広がるMOFの可能性

柔軟なMOFの応用はガスの分離に限りません。例えば、従来の剛直なMOFでは分離できなかった水と重水のような分子も、構造の柔軟性を利用することで分離が可能になります。そのほか、ガスに対する構造の応答性を利用したガス検知のセンサや、乾燥の仕方によって構造を変化させることで複数の機能を持たせるなど、柔軟なMOFの可能性はさらに広がっています。

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京都大学 物質-細胞統合システム拠点(WPI-iCeMS)  特定拠点准教授 大竹 研一 先生

京都大学 物質-細胞統合システム拠点(WPI-iCeMS) 特定拠点准教授 大竹 研一 先生

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無機・錯体化学

メッセージ

化学の研究をしていると、思い通りに進まず失敗することは少なくありません。しかし失敗こそ学びを得られるチャンスであり、そこに新しい発見が潜んでいることすらあります。高校生のうちはぜひ失敗を恐れずにいろいろなことに挑戦してください。もし失敗したら、なぜ失敗したのかをよく考えてみてください。考察することの大切さは失敗したときに限りません。何かに疑問を持ったときに「まあいいや」と思考停止せず考察する癖をつけておくと、研究に限らずいろいろな場面できっと役に立つはずです。

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