植物の根や茎を横方向に成長させる仕組みの謎に挑む!

植物の根や茎は横方向にも成長する
植物の根は下へ下へと伸びていき、茎は上へ上へと伸びていきます。また、根や茎は横方向にも成長し、太い根や幹を作ります。植物の縦方向の成長が「先端成長」、横方向の成長が「側方成長」です。このうち側方成長には、植物の維管束にある「前形成層・形成層」の細胞分裂による細胞数の増加が関係していることが知られています。しかし、どのように細胞分裂が制御されているのかは、長い間わかっていませんでした。
維管束の一部の細胞だけが分裂する
側方成長の仕組みを調べるため、シロイヌナズナの根の先端の観察が行われました。「共焦点レーザー顕微鏡」という機器を使うと、医療用のCTやMRIのように生きたままの生物を3次元的に観察できます。観察の結果、将来「師管(葉で作られた栄養分を植物の他の部分へ運ぶ組織)」になる細胞とその隣の細胞だけが分裂し、側方成長していることがわかりました。
細胞分裂を促進する遺伝子
分裂している細胞の中には、細胞分裂を活性化するタンパク質があるはずです。そこで、これらの細胞の中にだけ存在するメッセンジャーRNAの解析も進められました。その結果、見つかったのが「PEAR遺伝子」です。PEAR遺伝子を破壊したシロイヌナズナでは、側方成長は起こりませんでした。また、師管の細胞だけでなく維管束全体でpear遺伝子が発現するように操作すると、細胞数が非常に増えました。このことから、PEAR遺伝子は側方成長の鍵となる細胞分裂を誘発していることが明らかになりました。一方で、師管になる細胞以外の細胞では分裂が抑えられていることから、植物全体の細胞分裂を促進したり抑制したりして調整する仕組みが別にあると考えられます。
このような遺伝子の役割が一つ一つわかってくれば、植物の側方成長の理解がより進みます。例えば今後、遺伝子の発現をコントロールして、作物の収量をあげたり、森林の生産効率を向上させたりできるようになるのかもしれません。
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