鍼治療で声がよくなる? 健康をさらに高める東洋医学

よりよい健康をもたらす東洋医学
東洋医学には調子の悪い部分を治すだけでなく、健康な状態を維持・向上させる方法もあります。鍼(はり)や灸(きゅう)によって体を美しい状態にする「美容鍼灸(しんきゅう)」もその一つで、特に若い世代からのニーズが高まっています。すでに表情筋や喉のケアなどが行われていますが、効果は科学的に解明されていません。これを工学の手法で実証しようと、研究が始まりました。
鍼治療で声が変化?
進行中の研究の一つが、鍼治療による声の変化です。歌手や声優など声を扱う仕事をしている人は、喉のために鍼を打つことがあります。例えば胸や背中の周辺にあるツボを刺激すると、声の通りがよくなったり、声を出しやすくなったりすると臨床現場で確認されています。実際はどの程度声が変わるのか、音声解析ソフトを使って分析されました。
まず健康な被験者に鍼治療を施して、「あいうえお」と発音してもらった音声を収録します。2週間後、再び同じ被験者に集まってもらい、今度は鍼治療をしたと見せかけてから「あいうえお」を収録しました。データを比較すると、鍼治療後は特に「い」の声の通りがよくなり、「う・え・お」に関しても改善傾向が出ています。一方、鍼で刺激を与えなかった場合、声の変化は見られませんでした。音声解析ソフトに記録された波形の形状からは、鍼治療後に口の中で舌を置く位置が変化しており、その結果、声の通りが改善したのです。
日本ならではの弱い刺激
この実験では、皮膚のごく浅い部分に刺激を与えただけでも効果が出た、という点も注目されています。中国の鍼灸では鍼を深めに刺してツボをしっかり刺激します。一方、日本の鍼灸では刺激は弱いほうがいいと考えられており、鍼は深くても4~5mmしか刺しません。実験でも0.6mmほどしか鍼を刺しておらず、皮膚を破る程度の小さな刺激で声が変化しました。さらに研究を進めれば、日本の鍼灸ならではの効果も科学的に実証できるかもしれません。
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