音を集めて、音楽をつくる 電子音響音楽という表現

音を集めて、音楽をつくる 電子音響音楽という表現

日常の音が音楽になる

例えば、風が木々を揺らす音や、車が走る音、友だちとの会話、駅のアナウンスなど、私たちのまわりには、さまざまな音が存在しています。そうした音を録音し、電子機器を使って加工・編集し生み出されているのが「電子音響音楽」です。音楽の三要素であるメロディー・ハーモニー・リズムが明確でない作品もあるため、音楽と認識するのが難しいこともあるかもしれません。しかし、風の音や雑踏に人の手が加わった瞬間に、それは立派な音楽の一つになります。音を「集めて」「手を加えて」「組み立てる」という行為そのものが、音楽の創作につながっていくのです。

楽譜を書かなくても音楽はつくれる

電子音響音楽の大きな魅力は、スマートフォンやパソコン、ICレコーダーといった手軽な機器があれば誰でも挑戦できることです。特に「ミュージック・コンクレート」と呼ばれるジャンルでは、録音した自然の音や機械音、人の声などを編集して、新しい音の作品をつくります。楽譜を使わず、耳で音を聴きながら自由に構成していく音楽です。テーマを決めて作品を構築することも、音と対話するように、導かれるままにつくることもあります。自分だけの音の世界を追求できる、自由度の高い作曲方法でありながら、追求すればするほど深い世界が広がっていきます。

耳をすまして、音を発見する

最近は電子機器の普及から、イヤホンを使って電車内や街の中で音楽を聴く人が増えています。そのイヤホンを外してまわりの音に耳をすませ、意識して聴くと、風の音、足音、人の笑い声など、普段は気づかない音がたくさんあることに驚くはずです。そうした音を録音して再生すると、自分だけの発見があります。それが創作のヒントになり、電子音響音楽への第一歩となるかもしれません。目をつぶって視覚情報を遮断し、あえて音だけに集中してみると、新しい世界が見えてきます。あなたのすぐそばにも、音楽の可能性が眠っているのです。

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先生情報 / 大学情報

大阪芸術大学 芸術学部 音楽学科 教授 石上 和也 先生

大阪芸術大学 芸術学部 音楽学科 教授 石上 和也 先生

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電子音響音楽

メッセージ

最近は動画を撮ることはあっても、音だけを録音する機会はあまりないかもしれません。また、音楽を聴くときも映像と一緒に楽しむことが多く、視覚の情報に意識が向いてしまいがちです。そこで、音に耳を傾けましょう。目を閉じて音だけに集中してみると、これまで気づかなかった音が聞こえてくることがあります。ぜひ一度、視覚を手放し、音の世界にじっくり向き合ってみてください。スマートフォンなどで録音した音を聴いてみると、思いがけない発見があるかもしれません。

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大阪芸術大学は創立約80年、関西で最も歴史のある総合芸術大学です。芸術学部は造形系、メディア系、音楽系、教育系の4系統に分かれ、現在15学科で構成されています。造形系にはアートサイエンス・美術・デザイン・工芸・建築・写真の5学科、メディア系には映像・キャラクター造形・文芸・放送・芸術計画・舞台芸術の6学科、音楽系には音楽・演奏の2学科、教育系には初等芸術教育学科があります。各学科の専門性を磨くことはもちろん、学科間のコラボレーションも積極的です。