「買う気スイッチ」は、五感にあり!

センサリーマーケティングとは
消費者が商品を選ぶとき、すべてを理性的に判断しているわけではありません。気分や無意識の感覚に左右されることも多く、そのメカニズムが注目されています。視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感を通じて消費者行動に働きかける「センサリー(感覚の)マーケティング」は、そうした背景により1990年代ごろから発展した分野です。
五感が行動に与える影響
例えば、温かいコーヒーカップを手にした人は、冷たいコーヒーカップを手にした人よりも、他者を「温かく親切な人」と評価しやすくなるという実験結果があります。また、クルマのような高額商品の購入を想定した実験では、柔らかな椅子に座った人の方が、硬い椅子に座った人よりも、営業担当から提示された価格をそのまま受け入れやすくなる傾向が示されました。これらの結果からは、「温かい」「柔らかい」という感覚が、それを感じた人の行動に影響したと考えられます。センサリーマーケティングでは、こうした感覚が消費者行動におよぼす影響を明らかにしていきます。
店内に施されるさまざまな仕掛け
スーパーマーケットで、買い物かごの色が購買意欲に与える影響を調べた研究もあります。赤や青などの買い物かごを用意して、それぞれの色の買い物かごを使った客が会計をする前に「いくら使ったと思うか」と聞いたところ、赤い買い物かごを使った人は、実際の金額よりも低く見積もる傾向が確認されました。買い物の場において、赤は「特売」といった安さを伝える際に使われることが多いため、消費者は赤い買い物かごに入れた商品を、「お買い得」だと感じてしまうからだと考えられます。
このようなセンサリーマーケティングの知見は、消費者に望ましい行動を促す際にも役立つことがわかっています。例えばコロナ禍では、店内の照明を暖色にすると、レジを待つ客同士の距離が保たれることが明らかになりました。ほかにも、店内の香りやBGMがもたらす影響など、さまざまな研究が進んでいます。
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先生情報 / 大学情報

東京国際大学 商学部 教授 平木 いくみ 先生
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