廃棄物処分まで責任を持って考える、原子力工学の世界

原子力工学とガラスの関係
原子力工学では、発電所から出た使用済み核燃料を安全に廃棄する方法も研究されています。使用済み核燃料には、ずっと熱を出し続けるという特徴があります。そのため廃棄物処理には熱を吸収する丈夫な材料が欠かせません。そこで最適解として用いられているのがガラスです。ガラスは複数の元素でできており、各元素の間に空間があります。すき間があると元素が柔軟に動けるため、熱が起こす振動などの刺激を吸収できます。また、すき間の中にセシウムなどの放射性物質を閉じ込めることも可能です。
ガラスで固めて廃棄
原子力発電所では、使用済み核燃料を溶かしたガラスに混ぜてから固め、さらに粘土などで覆ってから地下深くに埋めて処分しています。廃棄物を閉じ込めたガラスは「ガラス固化体」といいます。処分の安全性を高めるには、ガラス固化体が壊れず安定している状態を長く保たなければなりません。そのために電子顕微鏡とX線を用いて、ガラス固化体内の放射性物質の変化や、ガラスに与える影響を探る研究が行われています。特に注目されているのが、廃棄物に含まれる白金族という元素の影響です。白金族はガラスと混ざりにくい性質があるため、ガラス固化体を壊す原因になることが懸念されています。
よりよい処分方法とは
白金族の一つであるモリブデンは、ガラスのすき間にうまく閉じ込められず異物として残り続けます。モリブデンは時間がたつにつれ酸化し、モリブデン酸塩になります。モリブデン酸塩は水に溶けやすいため、もしガラス固化体が壊れて内部が地下水に触れると、環境や人に悪影響を与える恐れがあります。影響を最小限にするためには、モリブデンが一カ所に偏らないようなガラス固化体を作り、一部が壊れたとしても流出量が少なくなるようにしなければなりません。そもそも壊れないような構造のガラス固化体を作ることも必要です。廃棄物処分の課題をさらに把握するためにも、ガラス固化体の構造に関する調査が続いています。
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東京都市大学 理工学部 原子力安全工学科 教授 松浦 治明 先生
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