海の気象を変えるのは波しぶき? 気象災害に備えるヒントを探る

気象災害に備える
海岸にある多くの構造物は、災害に対する歴史的な経験に基づいて丈夫に設計されています。しかし、気候変動などによって想定されていた規模を上回る気象災害が起これば、大きな被害が出るでしょう。例えば北海道では将来、爆弾低気圧によって極端に大きな冬の嵐が増えていくと予想されています。そうなると、大雪が降るほか、高潮による被害が出る可能性があります。爆弾低気圧が通過する際、海の上の気象である「海象(かいしょう)」がどう変化するのか、正確な予測が可能になれば、被害を最小限に抑えるための備えができるはずです。
海象を変化させる原因は?
海象に影響を与えている要素の一つが波しぶきです。波によって直径数十μmから数cmほどの飛沫(ひまつ)が生まれ、蒸発していきます。液体には蒸発するときに空気中の熱を吸収するという性質があるため、波しぶきも海上の大気を冷やすと共に水蒸気を供給しています。一つの飛沫の蒸発による熱や水蒸気の輸送量は少ないものの発生数が多いため、海象を変化させる原因になっていると言われています。
海と大気との熱輸送
飛沫の性質を調べるため、まずは直径2mmほどの液滴が蒸発するときの熱輸送の様子が可視化(気温など、目に見えないものを見えるようにすること)されました。この実験では、わずかでも風が吹くと、無風状態のときよりも液滴表面からの蒸発が加速し、熱や湿度が素早く運ばれていくことが明らかになりました。
液滴などの水面の近傍には、水面の温度から空気の温度まで急激に温度が変化する「境界層」という薄い層状の領域があります。風によって境界層が薄くなったり剥がれたりすると、熱輸送の速度は急激に上がります。実験でも、風に当たった境界層が風下に向けて剥がされる様子や、急激に熱を奪われて冷えた大気が風下に流されていくことが観察されました。今後はさらに自然の波しぶきに近い条件で実験を行うことで、海上での熱輸送の実態や海象への影響を明らかにしようと研究が続けられています。
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