講義No.15707 物理学

物質はどのように生まれたのか? 未来の素粒子物理学の実験

物質はどのように生まれたのか? 未来の素粒子物理学の実験

この世界をつくる最小単位「素粒子」

中学では「物質の最小単位は原子であり、陽子、中性子でできた原子核の周りを電子が回っている」と教わります。しかし実は、陽子、中性子はさらに小さな「素粒子」でできています。例えば陽子は、3個の「クォーク」という素粒子が集まったものです。
現在、素粒子は17種類見つかっており、その性質や素粒子間に働く力を説明した理論が、「標準理論」です。とても正確な理論ですが、例えば、「ダークマター」を説明できないなど、未解明の部分もあります。そのため、標準理論の実証や、標準理論を超える物理現象を探す実験が行われています。その実験施設が、スイスのCERN研究所にあるLHC(Large Hadron Collider)です。

宇宙の始まりの再現する「LHC加速器」

LHCは、光速近くまで加速した陽子同士を衝突させて、どんな現象が起こるか観測する装置です。この実験には世界中から研究者が参加しており、日本の大学も検出器の開発、運用、物理解析に携わるなどの貢献をしています。
LHCは、素粒子が高エネルギーで飛び交っていた、宇宙の始まりの状態を再現したものと言えます。そこからどう物質ができてきたか、宇宙の謎の解明にもつながると期待されているのです。

未来の素粒子実験「EIC」

2030年代には、アメリカで新たな加速器EIC(Electron-Ion Collider)の運用が計画されています。EICは、陽子の衝突で起こる現象を観測するLHCとは異なり、陽子の中の素粒子の様子を調べるものです。
例えば、陽子の中にいるクォークは、高い運動エネルギーをもって絶えず動き回り、その状態は常に変化しています。さらに、陽子の質量は3つのクォークの質量を足し合わせただけでは説明できず、内部での素粒子の運動や、相互作用によるエネルギーが大きく寄与していると考えられています。
EICでは、電子と陽子を衝突させて陽子の内部構造をより精密に調べ、その質量やスピンの起源を解き明かそうとしています。

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先生情報 / 大学情報

信州大学 理学部 理学科 物理学コース 助教 川出 健太郎 先生

信州大学 理学部 理学科 物理学コース 助教 川出 健太郎 先生

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素粒子物理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は大型加速器であるLHCやEICを用いた素粒子実験に携わっています。素粒子はとても小さな世界の話なので想像が難しいのですが、実際に人間の手でつくった装置で観測できるところに大きな魅力があります。また宇宙誕生に遡ると、素粒子の世界です。宇宙誕生の謎を解明するためには素粒子の研究が大切です。
宇宙や素粒子に興味がある人は、本を読んだりしながら、その気持ちをぜひ大切にしてください。そして、この分野では数学がとても重要になりますので、数学をしっかりと勉強してください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

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信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
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