高温高圧水は魔法の水? 水だけでバイオマスから材料を合成

高温高圧水は魔法の水? 水だけでバイオマスから材料を合成

水で高分子を取り出す

材料の合成には薬品を使うことが常識でした。しかし、薬品の代わりに高温高圧の「水」を使ってバイオマス資源から材料を合成する方法が開発されました。例えば、「キチン」を使ったナノファイバーです。
キチンとは、カニ殻、イカの骨などに含まれている天然高分子です。キチンを取り出すには、従来、強いアルカリ性の薬品でタンパク質を取り除く工程が必要でした。そのため有害成分が残る可能性もありましたが、水だけのプロセスなら、環境にも人体にも優しい材料ができるのです。

高温高圧の水は魔法の水?

水は通常100℃で沸騰・蒸発しますが、圧力を加えると蒸発せず、酸性度(pH)や粘度が変わり、油を溶かすなど、普通の水にはない性質を持つようになります。374℃、22.1MPa(220気圧)まで上げたものは「超臨界水」という特殊な水になり、さまざまな用途への利用が期待されています。
今回開発された方法は、超臨界水ほどの高温高圧ではなくても、水の性質が変わる原理を利用しています。100℃~200℃、10気圧以下の水で、イカの中骨からタンパク質を分離してキチンを取り出します。それを常温のジェット水流の力でナノサイズに細かくしたうえ、さらに高温高圧水でゼリーのような状態(ゲル)に変化させることに成功しました。ゲル状のキチンは保湿剤や有効成分を混ぜて塗り薬にするなどの用途が考えられます。

石油への依存が軽減されるかも

従来、除去されたタンパク質は強いアルカリの薬剤で変質しており、ゴミになっていました。水を使う方法なら、タンパク質は水に溶けた状態になるので、ほかの用途にも使えます。また、100℃~200℃は比較的低い温度のため、その点でも使う原料を破壊しにくいなどのメリットもあります。
この方法で、地球上に最も多いバイオマスと言われている、植物に含まれるセルロースという高分子を利用した材料開発も進んでいます。これまでの石油を原料にした材料合成が脱却できる可能性も期待されています。

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信州大学 繊維学部 化学・材料学科 教授 長田 光正 先生

信州大学 繊維学部 化学・材料学科 教授 長田 光正 先生

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バイオマス変換工学、超臨界流体工学

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今、私たちは石油を使って快適な生活を送っています。エネルギーも、たくさんの便利なモノの材料も、石油に依存しています。これは100年くらい前の研究者たちが、当時の常識を覆す発想で、石油からものを作るという研究開発を進めてきた結果です。そして今では「石油を使った材料」が常識になっていますが、今後も石油を使い続けられる保証はありません。これからの時代はあなたが、石油化学という常識を覆す発想で物事を考えながら、新しい技術を開発し、新しい社会をつくっていってください。

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