タンパク質の「折りたたみ」を制御する人工分子の開発

「折りたたみ」が命
体の中で合成されるさまざまなタンパク質が正しく機能するためには、正しい立体構造に折りたたまれること(フォールディング)が必要です。タンパク質の折りたたみが正常に行われないと、本来の機能が発揮されないだけでなく、アルツハイマー病やパーキンソン病といった「フォールディング病」と呼ばれる疾患の原因にもなることが知られています。
タンパク質の折りたたみを助けるのは、高分子のタンパク質でできたフォールディング酵素です。この酵素の機能をより扱いやすい低分子有機化合物で人工的に模倣し、折りたたみ現象を効果的にコントロールしようという研究が行われています。
酵素の機能を低分子で
タンパク質酵素は複雑な構造を持つ巨大な分子ですが、化学反応の触媒となるカギは、限られた部位にあります。酵素をよく観察して調べ、カギとなる部位の化学的な機能を模倣できるような小さな有機分子をデザインして合成します。合成した分子は、立体構造をとっていないタンパク質や、タンパク質が折りたたまれないような特殊なモデル細胞に投与して性能を評価し、見本となる酵素の性能に近づくよう改良を重ねていきます。
進化の過程で最適化されてきたタンパク質酵素は非常に高性能で、小さな有機分子で完全に模倣するのは容易ではありません。しかし研究の積み重ねにより、性能の差はどんどん縮まっています。例えば、細胞小器官の小胞体で構造が未成熟なタンパク質の折りたたみを促進するプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)という酵素では、ほぼ匹敵する性能を持つ有機分子の合成に成功しています。
医薬品生産に応用
さらに元の酵素の性能を超えるような有機分子の合成をめざして研究が進められています。酵素を模倣した有機低分子は、フォールディングの異常が引き起こす神経変性疾患の薬開発につながるほか、タンパク質製剤などバイオ医薬品の生産においても低コスト化、効率化に役立つものとして期待されます。
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