講義No.16584 医学

分子マーカーで死因を特定! 命を救う法医学の研究

分子マーカーで死因を特定! 命を救う法医学の研究

分子レベルで死因を特定

法医学は、不審死、突然死などに対し、法律に基づいた解剖で死因を特定することが主要な研究です。法医学の本質を表わす言葉に「屍(し)は師なり」という言葉があります。つまり、遺体が多くのことを教えてくれるということです。
従来の解剖では臓器の変化を調べますが、目に見える変化がないことも多いため、細胞レベル・分子レベルでの研究が進んでいます。免疫物質であるサイトカインや各種ホルモンをはじめ、死に至った状況で増えるさまざまな体内物質は、死因を特定する「分子マーカー」になります。例えば、心臓の状態に変化を及ぼすような重篤な疾患がなくても、慢性的なストレス環境にあると、人は心疾患で突然亡くなることもあります。そのとき、体内でどんな物質が通常より増えているかがわかれば、死因は心疾患であったと推定できます。

危ないストレス状態を察知する

こうした分子マーカーの研究は、臨床の現場でも役立ちます。例えば、病状が進んでいなくても、血液検査などによって分子マーカーが増えていることがわかれば、「突然死に至る可能性があるから休んでください」というような対処ができます。ストレスに気づかない働き盛りの人の命を助けられるのです。
法医学の研究は、多くの命を救い、人々の健康を向上させ、ひいては、社会の活力や経済活動にも貢献しています。

「命を救う分子マーカー」の研究

また、分子マーカーの研究は、自死を防ぐことにもつながる可能性があります。誰かがうつなどで自ら命を断ってしまったとき、残された人は「〇〇の悩みがあったから」と推測するしかありません。しかし同じ悩みがあったとしても、自死を踏みとどまる人もいます。そこで、自死に向かう精神状態と関連する分子マーカーを見つけ、事前に危険度を察知する研究が進んでいます。
こうした分子マーカーを、唾液や髪の毛などから見つける方法も研究されており、患者に負担をかけない検査方法の開発も目標とされています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

和歌山県立医科大学 医学部  教授 近藤 稔和 先生

和歌山県立医科大学 医学部 教授 近藤 稔和 先生

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法医学

先生が目指すSDGs

メッセージ

臨床医学であれば、10人中7人に効く薬であれば「よく効く」と言われます。しかし、法医学では、10回の解剖で7回真実を突き止めたとしても、3回が間違った結論のまま火葬されてしまったら、取り返しのつかない重大な問題になります。私の研究室では、常に100%を追求するどん欲さを学生に求めています。また、研究室の活動の一環として、学生は沖縄の戦没者の遺骨収集に参加しています。学んだ知識を社会に還元するとともに、世の中を知ることも、将来役立つ体験だと考えているからです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

和歌山県立医科大学に関心を持ったあなたは

本学は、和歌山県唯一の公立大学で、医学部、保健看護学部、薬学部の3学部を擁する医療系総合大学です。各学部での専門教育に加え、学部の垣根を越えたケアマインド教育等を実施し、高度医療人の育成に力を注いでいます。
また、それぞれの魅力あふれる3つのキャンパスは、いずれも和歌山県の北端部に位置し、新大阪駅や関西国際空港からもアクセスが良く、全国から学生が集まってきています。
これから更なる発展を遂げる本学で、一緒に医療の未来を創っていきましょう。