メリットを最大に 「最適化」の計算が社会を動かす

メリットを最大に 「最適化」の計算が社会を動かす

効率のよい順番をどう探す?

福岡を出発し、広島、京都、大阪、東京、仙台、札幌を回って、また福岡に戻るとします。どの順番で回れば、移動距離や時間を最も短くできるでしょうか。例えば、福岡から仙台まで行った後に大阪へ戻るような回り方では、行ったり来たりが多くなり、移動に無駄が生まれます。近い場所から次々に回ればよさそうですが、そう簡単ではありません。訪問を計画する都市が増えるほど、考えられる順番は爆発的に増えていきます。
複数の場所をできるだけ効率よく回る問題は「トラベリングセールスパーソン問題」と呼ばれます。一見身近な旅行計画のようですが、実はコンピュータでも解くのが難しい代表的な最適化問題なのです。

荷物の積み込みも、AIも

最適化とは、ある条件下で時間を短くする、コストを抑える、売上を伸ばすなど、目的を満たす最もよい答えを探す考え方です。例えばトラックに荷物を積むとき、大きさや形の違う箱を、配送順などの条件を考えながら無駄なく積むことができれば、輸送の効率が上がり、コスト削減や人手不足への対応にもつながります。
この考え方は、AIや機械学習にも関わっています。機械学習では、実際の値と機械が予測した値との誤差をできるだけ小さくしようとします。生成AIも、利用者が求める答えとのずれを小さくすることで、より満足度の高い応答に近づこうとしています。

今ある状態をどう改善するか

現在、特に求められているのが、ゼロから最適な答えを探すのではなく、すでにある状態をどう改善するかという視点です。例えば、何もない土地に新しい街をつくる場合と、駅や道路、建物がある街を再開発する場合では、考えるべき制約が違います。荷物の積み込みでも、すでに箱が入っている状態から、残りをどう入れるかを考えることは必要です。
最初の状態が決まっているとき、どこを変えればよりよい結果に近づけるのか、といった問題を理論的に考えることで、現実社会の複雑な課題を解く手がかりが生まれるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

九州工業大学 情報工学部 データサイエンス・AIコース 教授 宮野 英次 先生

九州工業大学 情報工学部 データサイエンス・AIコース 教授 宮野 英次 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

数学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校の数学は、あなたが思っている以上に世の中で役に立っています。例えば辞書で単語を調べるとき、真ん中を開いて右か左かを判断し、また半分に分けて探していくと、1000ページあってもおよそ10回で目的のページにたどり着けます。これは対数関数の考え方です。インターネット検索や情報処理にも、同じような数学が使われています。高校の数学は、社会のさまざまな問題を考えるための道具になります。苦手に思っているとしても、もう少し頑張ってみてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

九州工業大学に関心を持ったあなたは

「情報工学」は、高度情報化社会の進展の中で、ますます必須知識・技術となっています。
九州工業大学情報工学部は1986年に創設された日本初、現在も国立大学で唯一の情報工学部です。知能情報工学科、情報・通信工学科、知的システム工学科、物理情報工学科、生命化学情報工学科の5学科があり、それぞれの分野において、高度な専門技術を身につけた人材を養成します。これまでに1万人を超える情報通信技術者を生みだし、様々な分野で日本の情報通信革命を支えています。