企業が環境も守りながら利益も出す! 未来の会計のチカラ

企業が環境も守りながら利益も出す! 未来の会計のチカラ

新しい会計の考え方

企業は利益だけでなく、地球や社会のことも考えなければならない時代になりました。そんな中で注目されているのが「サステナビリティ会計」という新しい会計の方法です。売上や利益などのお金の数字だけでなく、CO₂の排出量や、社員の働きやすさ、地域とのつながりなども数値化して、企業の取り組みをトータルで評価するものです。
CO₂をどれくらい減らしたかを成績にして、役員のボーナスに反映する企業もあります。サステナビリティ会計を通して、企業は利益を出しつつ、地球や社会のためにも貢献できるようになるのです。

牛が地域を救う?

サステナビリティ会計は、地域づくりにも活用されています。大分県では、人口が減ったため畑が使われずに放置され、問題になっていました。そこで始まったのが「放牧牛プロジェクト」です。使われなくなったミカン畑で牛を放牧して育て、自然を守りながら新しい産業をつくる試みです。放牧なので牛舎や堆肥舎などの設備を建てる必要がなく、牛1頭あたりの利益も約20万円増えました。放牧場は観光スポットにもなり、牛肉を使った特産品「赤身肉」も生まれました。この放牧牛プロジェクトでは、参加者数や畑の面積、観光客の増加など、地域への良い影響が数字でしっかり評価されています。

数字で未来のストーリーをつくる

サステナビリティ会計の強みは、企業や地域が「どんな未来をめざしているか」を数字で伝えられることです。売上や消費者の満足度、働きやすさなど、さまざまな視点から企業の取り組みを数値化して、環境や社会への働きかけが、どのように利益につながるかを示せます。
また、企業が自然に与える影響をお金に換算することも可能です。例えば、ペットボトルをつくる企業が出すCO₂は、「年間で約9億ドル分の環境への負担」といった形で表せます。このように、普段は見えにくい「価値」を数字で表すことで、企業の利益と社会の未来を両立する新しい経営が実現できるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

横浜国立大学 経営学部 経営学科 准教授 曹 勁 先生

横浜国立大学 経営学部 経営学科 准教授 曹 勁 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

サステナビリティ会計、環境会計

先生が目指すSDGs

メッセージ

論語に「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」という言葉があります。好きになり、楽しむことで、学びはぐっと深まります。私は中国から来日し、サステナビリティ会計に出会いました。大分県の放牧牛プロジェクトでは現地を歩き、地域の方々と対話する中で、数字の向こうにある人々の思いに触れました。あなたも身近な社会問題に関心を持ち、「なぜ?」と考える習慣を大切にしてください。そして自分の興味や関心を大切にし、学ぶことを心から楽しんでください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

横浜国立大学に関心を持ったあなたは

横浜国立大学は、高い国際性と実践的な学問を尊重し、社会に開かれた大学をめざします。全学部の学生がひとつのキャンパスで学び、学部の垣根を越えた交流ができ、国立大学には数少ない経営学部も置かれています。新しい潮流を起こして21世紀の人類社会に貢献できるよう、社会からの要請を的確に把握し、国民から委ねられた資源を有効に活用しつつその活動を開放し、社会の期待に応えます。