太陽光発電で作りすぎた電気を水素に変える!

余剰電力を水素に変える
電気は作る量と使う量のバランスが取れていなければなりません。このバランスが崩れると、最悪の場合は発電所の設備に障害が起きます。電気が余りすぎても停電が起きる可能性があります。クリーンなエネルギーとして太陽光発電の普及が進んでいますが、日照や気温の条件によっては電気が余ってしまうこともあります。そのような場合、電力会社は一時的に太陽光発電を停止させたり、余った電気を使わずに捨てたりして、電力の需給バランスを調整しています。
余剰電力をうまく活用する方法の一つとして注目されているのが、電気を使って気体燃料を作る「パワーツーガス(Power to Gas)」です。余剰電力で水を電気分解して作った水素は、自動車の燃料や発電用のエネルギー源として利用できるほか、貯蔵や運搬も可能です。
高性能なマンガン膜を作る
「マンガン電池」で知られるように、電気をためやすい性質をもつ金属のマンガンを層状にして、その間にさまざまな化合物をはさんだサンドイッチ構造の膜も、電気をためることができます。このとき、はさむ化合物の種類を変えると、電気をためる容量を変えられることがわかりました。サンドイッチの具にあたるのは、金属と非金属の原子が結合した「金属錯体」と、吸着剤として知られる「脂質」です。マンガン層にはさむ金属錯体、脂質の種類を変えるとさまざまな膜を作れます。研究が進み、今では理論上の容量の約半分(従来の4~5倍)もの電気をためられる膜ができてきました。この膜を電池としてだけではなく、触媒として利用することで、余剰電力を使って水素を作る研究が進行中です。
研究を通して地球環境を改善する
通常、水を電気分解するには、理論上は1.23Vですが、効率的に反応させるためには1.6~2.0Vの電圧が必要です。この触媒を利用すると1.1Vでも電気分解が起きます。より少ないエネルギーで水素ガスを作ることができれば、余剰電力をより有効に活用できるようになり、地球環境の改善にもつながっていくはずです。
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先生情報 / 大学情報

関東学院大学 理工学部 理工学科 応用化学コース 准教授 友野 和哲 先生
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