研究開発の成果を社会に届けるために

研究開発の新しいプロセスモデル
研究開発の現場ですばらしい技術が生まれても、それが製品化されたり世の中で使われたりするところまでなかなか到達しないことがあります。この課題を解決するために、「ACDPサイクル」という新しい研究開発プロセスのモデルが提案されています。従来重視されてきた「Plan→Do→Check→Actionサイクル」に対し、「ACDPサイクル」は実務者が行動(Action)から始めることにより、実践または製品が創出することを企図したものです。
成功の鍵は?
研究開発のプロセスは、初期の段階と開発の方向性がある程度見えている段階とに分けられるため、「ACDPサイクル」にも2種類があります。初期段階では、製品開発のための実践(Practice)の創出をめざして「Action→Communication→Dialogue→Practice」というサイクルを回します。方向性が見えてきた後は、試作品や製品の制作(Production)をゴールとした「Action → Communication → Design → Production」のサイクルになります。特に重要なのは、CommunicationとDialogueです。プロセス分析の結果、多面的なコミュニケーションと対話が技術革新の突破口となることが明らかになっているからです。
実践知を未来に伝える
プロセス分析からは、失敗や工夫が重要な役割を果たしていたこともわかりました。このような「実践知」を抽出してまとめるために、製造現場や病院などさまざまな現場で働く人々の行動を観察して、どのように問題を解決しているのかを丁寧に調べる取り組みが行われています。そして、それを次の世代に伝えるために、文章だけでなく、映像や音声の活用、現場での体験学習など、新しい方法が模索されています。
開発された方法は、さまざまな現場に積極的に適用され、その有効性と限界を検証して改良が加えられます。ここでも「ACDPサイクル」が回っているのです。
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静岡大学 情報学部 行動情報学科 助教 後藤 謙太郎 先生
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