その「意思決定」、実は周りに影響されているかも?

本当にそれを選びたいのか?
日常生活の中で、私たちは複数の選択肢の中から最適なものを選ぼうとする「意思決定」を何度も行っています。しかし、本当に自分の意思で選択できているでしょうか。例えばファストフード店でポテトのサイズを選ぶとき、「Sだと物足りない気がするけれど、Lだと高いかな」と思い、なんとなくMサイズを選ぶことがあるでしょう。これは「妥協効果」と呼ばれ、複数の選択肢の中で、無難な中間を選びやすくなる現象です。また、ある商品Aの横にそれよりも少し劣る商品Bを置くことで、Aを魅力的に見せる「魅力効果」と呼ばれる現象も選択行動に影響します。このように私たちは、提示方法や比較対象によって意図しない選択をすることがあるのです。
本人の素直な選択へ
この意図しない選択が、福祉分野では課題になることがあります。介護される立場になった人は、他人に迷惑をかけたくない気持ちが働いて遠慮してしまうなど、そのときの気分やムードによって本来の自分の意思とは異なる選択をしてしまうことがあるのです。特に、気分がネガティブなことと妥協効果が関連している仮説もあります。福祉分野では本人の意思を尊重することが求められますが、意図しない選択の可能性もあることから、その把握は困難です。こうした選択過程や選択時の気分の影響が明らかになれば、本人の素直な意思が選択に反映できるかもしれません。
いろいろな角度から知る「意思決定」
「人間の行動はある程度説明ができ、操作できるのではないか」という考えのもと、1980年代から行動経済学や心理学の研究が進んでいます。例として、選択時の迷いや注目・比較した後に選択するまでの過程を、視線の動きと合わせて検証することや、行動促進手法の「ナッジ」と呼ばれる、個人の選択の自由を尊重しながらも望ましい行動を促す手法の探索などです。この分野の研究は多岐に渡り、商品開発や医療・福祉のほか、さまざまな分野における選択肢の提示方法としての応用が期待されています。
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