ペットにも痛みの少ない「低侵襲治療」を!

体への負担が少ない治療
外科手術で大きく切開しなければならない場合、痛みが強い、回復に時間がかかる、傷跡が残るといった問題があります。ただ、腹腔(ふくくう)鏡手術など、小さな穴から器具を差し込んでモニタで確認しながら行う手術が一般的になるにつれて、そうした問題は改善されてきています。人に対する医療では手術支援ロボットを用いた手術も普及してきています。こうした体への負担が少ない治療法を「低侵襲(ていしんしゅう)治療」と言います。
ペットにも低侵襲治療を
現在、動物に対する医療にも低侵襲治療を導入する流れが世界的に加速しています。内視鏡手術やIVR治療は世界中で行われるようになってきています。また、極少数の施設ではロボット支援手術も始まっています。日本でも犬や猫の避妊手術やがんの治療を低侵襲で行う獣医師がいます。
低侵襲手術がペットの痛みを減らしているという科学的エビデンスはまだ確立していないものの、実際に体験した飼い主や獣医師からは、「術後にすぐ歩き始めた」「すぐにごはんを食べ始めた」などの、従来の手技よりも動物の回復が早いことを指摘する声が上がっています。動物は人間と違って、痛ければ動かないし痛くなければ動くものなので、すぐに歩け、ごはんを食べられるということは痛みが少ない、すなわち低侵襲と推測できます。
低侵襲治療普及への壁
ペットを家族としてとらえ、人間と同じような医療を受けさせたいという飼い主が増えていることや、動物愛護、動物福祉への関心の高まりから、今後も動物への低侵襲治療の需要は増えると考えられます。
ただ、低侵襲治療普及には壁もあり、その一つが高額な治療費です。人間の医療費は保険や税金で補填されますが、ペットの場合はすべて自己負担だからです。また、獣医師の新しい治療法に対する経験不足や、動物専用の低侵襲治療に使用する器具の不足もあります。こうした問題に対して、症例研究や技術教育、動物用医療機器開発への情報提供など、一歩一歩、取り組みが進められています。
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