注射でがん予防? 次世代のがんワクチン

ワクチンを補強するアジュバント
ワクチンは、病原体などの「抗原」を体内に注入し、あらかじめ免疫システムに記憶させる製剤です。これまでは主に感染症に対して用いられてきましたが、最近では、がんを予防・治療するためのワクチンも開発されています。このワクチンの効果を補強する物質が「アジュバント」です。
免疫には、抗体により敵を中和する「液性免疫」と、ウイルス感染細胞やがん細胞などの異常細胞を直接攻撃する「細胞性免疫」があります。がんワクチンでは、特に細胞性免疫の強化が必要で、これを強力に後押しする新しいアジュバントが求められています。そこで、免疫細胞の「Toll様受容体(TLR)」に結合し、免疫応答を引き出す化合物(TLRリガンド)がアジュバントとして期待されています。しかし、この化合物は、そのままでは効果が低いことや重い副反応を引き起こす恐れがあることが実用化の壁となっていました。
ナノ粒子を使って免疫細胞を狙い撃ち
この壁を破るため、ナノ粒子を使った次世代ナノアジュバントが開発されました。これは体内でも安定な金のナノ粒子に、TLRリガンドと糖鎖(糖類)を化学的に結合させたものです。免疫細胞の表面には、特定の糖鎖と結合する受容体が多数存在します。糖鎖を利用して免疫細胞を狙い撃ちし、安全かつ効率的にアジュバントを届けられるようになったのです。
将来はがんを予防、治療ができる日が来る?
金ナノ粒子の強みは、複数の化合物を同時に搭載できる点です。TLRリガンドと糖鎖に加え、がんの目印となる抗原も載せた「ナノワクチン」も開発されています。これが免疫細胞に届くと、がんの目印と攻撃指令を同時に学習させることができ、がん細胞への攻撃力が飛躍的に高まります。マウスを用いた実験でも、がんの定着や増殖を抑える結果が出ました。正常な細胞も傷つけやすい従来の抗がん剤とは異なり、自身の免疫の力でがん細胞をピンポイントに攻撃する革新的なアプローチです。将来、注射一本でがんの治療や予防ができる日が来るかもしれません。
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