講義No.15274 医学

子どもの未来を支える小児医療

子どもの未来を支える小児医療

子どもは「小さな大人」ではない

小児科では「小児は成人の小型のものではない」という考え方をとても大切にしています。子どもは成長の途中にあり、臓器の発達スピードもそれぞれに違います。そのため、大人と同じ基準や方法で治療するのは無理があります。また、子どもは発症した病気と長く関わることが多く、特に慢性の病気では薬の副作用にも十分な配慮が必要です。薬を使って病気を治すだけでなく、その後の成長や生活の質を守ることも、小児科医の重要な役割です。子どもの将来を見据えた診療が、日々の現場で求められています。

ビタミンで病気を治す?

ネフローゼ症候群という腎臓の病気では、通常は治療にステロイド薬が使われます。しかし、ステロイドには骨がもろくなる副作用があり、子どもの身長の伸びに影響が出かねません。そこで注目されているのが、抗酸化作用をもつビタミンEやビタミンCです。これらは体への負担が少ないため、治療効果が実証されれば、子どもにも長期間、安全に使える可能性があります。病気と長く向き合う子どもたちにとって、できるだけ体に優しい治療法を見つけたいというのが、小児科医の願いです。

小児科が遺伝子の病気を見つける

近年は、遺伝子を詳しく調べる技術が大きく進歩してきました。遺伝性疾患は、がんのように環境要因で発症する病気とは異なり、生まれつき体に影響を与えるケースが多いために小児期に発見されることが多いものです。つまり、小児科が早期発見のカギを握っているのです。こうした病気の診断や治療、さらには将来の病気のリスクを把握する上で、小児医療においては遺伝子検査がますます重要になるでしょう。小児科では、子どもの時期だけでなく、人生全体を見通した診療を行い、成長後は内科の医師にしっかりとバトンを渡します。数多くの症例に触れられる小児科だからこそ果たせる役割があり、それは社会全体の健康を支えることにもつながっています。小児科は、まさに未来の医療を切り開く最前線なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪医科薬科大学 医学部  教授 芦田 明 先生

大阪医科薬科大学 医学部 教授 芦田 明 先生

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小児科学、小児成育学

メッセージ

私が小児科医になったのは、特別に強い意志があったわけではなく、面白い先生に出会ったり、「こうしてみたら?」と誰かに言われたりと、小さな出来事の積み重ねがあったからでした。あなたも出会いや偶然を見逃さず、やってみようという気持ちを大事にしてください。「チャンスの女神には前髪しかない」と言いますが、ふと現れた機会をつかめるのは、いつも好奇心を持ち続けている人だけなのです。やってみて面白くなかったらやめればよく、一歩踏み出した先に、自分だけの道が見えてくるはずです。

大阪医科薬科大学に関心を持ったあなたは

2021年4月、大阪医科大学と大阪薬科大学は大学統合を行い、医学部・薬学部・看護学部を有する本邦有数の医療系総合大学「大阪医科薬科大学」としてスタートしました。
今後、医学部生、薬学部生、看護学部生がともに学べる学習環境を確立し、「医薬看融合教育」を更に発展。現代のチーム医療における医師、薬剤師そして看護職者としての役割を学生時代から強く意識できる恵まれた医療教育の環境の中、社会に貢献できる高度医療人を育成します。